VW、生産も「CO2ゼロ」 EV部品会社に義務付け

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52875480S9A201C1EA1000/


走行時にCO2を出さないEVには「不都合な真実」がある。
火力発電が多い地域では、走行のための電気や電池をつくる際にCO2を出す。
生産やエネルギー生成、リサイクルまでを評価するライフサイクル評価(LCA)で見ると、ガソリン車より多くCO2を排出することもある。

そこで企業は行動に移した。VWは全体で2050年にカーボンニュートラル達成を目指して工場投資を決め、独ダイムラーも39年の実現を打ち出した。欧州以外の企業に先んじ、動いたのは2つ理由がある。

一つはEUが50年にEU全体でのカーボンニュートラル義務付けに向け動いていることだ。
石炭火力発電に頼る東欧の加盟国は反発するが、西欧でコンセンサスになりつつあり企業は今から対応が必要だ。

もう一つは「自動車悪玉論」の広がりだ。9月のフランクフルト国際自動車ショーでは環境団体「ザンド・イン・ゲトリーベ」が「自動車は悪」と訴え、会場の入り口のひとつを封鎖する過激な行動に出た。
別の団体は自転車で1万2500人が会場に乗り付けるデモを実施した。

VWはID.3に部品を供給する企業から初めてカーボンニュートラルを義務付ける契約を結んだ。
車載電池は韓国LG化学が再生エネを使い生産しているという。だがほとんどの部品メーカーが排出枠の購入などで辻つまを合わせているとみられる。環境の名の下の新たな負担だ。

VWは手綱を緩めない。調達担当のシュテファン・ゾンマー取締役は「持続可能性は(サプライヤーとの)取引を決める要素となる」と述べ、義務化の対象を他の車種、工場に広げる計画だ。

EUでは車業界に対し、LCAで規制する議論が進む。
世界で最も厳しい環境規制を導入し、他地域より企業の競争力を高めるのがEUの施策だった。
日本では「夢物語」とも思われる話が現実のビジネスに影響を与え始めている。日本企業も無視できない。