パワートレインのまとまりの良さに対し、シャシーの味付けはあまり良くなかった。
バレーノのシャシーを見ると、サスペンションモジュールが前後ともものすごくコンパクトに作られている。
全長4m以下という限られた寸法の中で室内を限界まで広げるためだろう。
その甲斐あって、バレーノのキャビンは300リットルあまりの荷室を確保しながらなお、
常識的な車高のサブコンパクトクラスのライバルと比較しても
ぶっちぎりの広大なものとなっている。
サスペンションストロークの小ささと、それに伴う乗り味の悪さは、
広大な室内とのトレードオフという感があった。

その乗り味の悪さをある程度救済しているのが、座面の設計がわりといいシートである。
試乗車はセットオプション装着車でシート表皮はレザーであったが、
座ってからある程度時間が経つとシートが腰に馴染んでくるようなウレタンの硬度設定で、
少々の長時間運転でもドライバーに大きな身体的ストレスを感じさせない。
ワントリップ500km程度までの中距離ドライブなら、
シャシーの味の悪さを押して楽しいドライブを継続できるだろう。
ただし、シートバックのホールド性は弱く、タイトなワインディングロードでも
ドライバーの体の軸線をピタリと保持する形状であったスイフトに比べると、
ツーリング好きなユーザーを喜ばせるタイプのものではなかった。

バレーノはワンドライブ1000km超といった長距離ツーリングはやらないが、
日常ユースだけでなくクルマに行楽道具を積んでの
お出かけもやりたいという顧客にとっては満足度の高いクルマと言える。

https://s.response.jp/article/2016/08/07/279744.html