国会で高市早苗・経済安全保障担当相の総務省内部文書をめぐる問題が紛糾するなか、高市氏のおひざ元、奈良県では知事選が3月23日に告示された。保守分裂で自民党の奈良県連内でも支持が割れるなか、県連会長の高市氏は永田町を離れられない状態だ。そんな状況を横目に日本維新の会は、大阪府以外で初めての公認候補が知事の椅子を狙っている。

 3月26日、奈良県橿原市のホールで、自民党の奈良県連が推薦する無所属新顔で元総務官僚の平木省氏(48)の決起大会が開かれた。

 ただ、その壇上で応援演説をしたのは、奈良が地元ではない松本剛明総務相だった。

 本来なら、県連会長の高市氏がその場所にいるはずだった。そもそも、平木氏は高市氏が総務相時代の秘書官であり、知事選の候補者として擁立に動いたのは高市氏だ。

 平木氏のSNSでも、「高市大臣も参戦!」と告知されていた。

 候補者には、自民党がこれまで推してきた無所属現職の荒井省吾氏(78)もおり、保守分裂となっている上に、日本維新の会が公認した新顔、元奈良県生駒市長の山下真氏(54)もいる。

 厳しい選挙戦が予想されるなか、知名度抜群の高市氏の地元入りは、関係者も大きな期待を寄せていた。

 しかし、24日になって高市氏の奈良入りはキャンセルになったという。

「高市先生は、26日の総決起大会に加えて、25日にも朝の出発式に参加すると聞いていました。選挙戦は、維新の山下氏との接戦が予想されますが、こちらがやや押されている印象です。高市先生に来てもらい、ばんかいしたいと待ちわびていたのですが、急に『東京を離れられない』ということでキャンセルに……」

 と平木氏陣営の地方議員が話す。

 会場の有権者も、「松本大臣が平木氏の応援演説に来て、高市大臣は来ない?」とつぶやいていた。

 だが、自民党のある幹部はこう話す。

「高市氏は、地元で知事選の応援をしている場合じゃないんでしょう」

安倍政権下の放送法の「政治的公平性」をめぐる総務省の内部文書で、高市氏は自身についての記述に関して「捏造(ねつぞう)だ」「レク(説明)もなかった」と主張し、もし文書の内容が事実なら議員辞職も辞さないとの意向まで示した。

 その後、総務省は、内部文書は同省が作成したとし、レクも行われた可能性が高いとするなどの調査結果を22日にまとめた。国会での審議も続くなか、26日に奈良に行き、平木氏の応援演説をしている余裕は高市氏にはなかったのだろう。

 野党は、国会で連日のように高市氏を追及しており、27日の参院本会議でも高市氏の経済安全保障担当相の罷免(ひめん)を求めた。

 これに対し、岸田文雄首相は、「引き続き国会審議に真摯(しんし)に対応し、丁寧に説明してもらいたい」「罷免する理由はないと考えている」と答弁した。

 前出の自民党幹部は、

「現在の岸田内閣では、旧統一教会問題などで4人の閣僚が実質的に更迭されている。高市氏も、となれば5人目でしょう。支持率が芳しくない岸田首相は、絶対にこれ以上の更迭も辞任も避けたいのに、高市氏が一方的に自分の進退にまで踏み込んでしまい、混乱させている」

 と話す。

 奈良県知事選についても、

「維新に取られるわけにはいかないので、党としては高市氏には地元に戻り、当選のために頑張ってほしいところでしょう。ただ、国会審議があるのと、知事選で県連会長としての進退を問われたりした際に何を言い出すかわからないという心配もあり、26日の“お国入り”も官邸からストップがかかったようです。岸田首相は、今は統一地方選と衆参の補選を抱えていて、静観するしかないので頭が痛いところでしょう」

 と語った。

 そうした自民党の“失策”を遠くから見ている維新の幹部は、

「うちの山下と平木氏が競り合う展開のなか、高市氏が国会でもめて、地元にも来ないというのは実にありがたい」

 とほくそ笑む。

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AERAdot
3/31(金) 18:15配信
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