「私の演説を聞いていてくださった方のご依頼だったので」

 参院選公示前の6月に「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」の関連施設を訪問していたことについて、8月18日、自民党の生稲晃子参院議員(54)は会見でこう弁明した。

 演説後、聴衆から頼まれたため、急遽施設を訪問したというのだ。しかし、「それはありえません」と疑問を呈するのは、生稲議員の選対を手伝った自民党関係者だ。

「生稲さんの遊説スケジュールは、前日に15分から30分刻みで組まれていました。施設を訪問した6月18日は、11時30分から八王子駅前、13時45分から多摩センター駅前で、自民党市議とともに遊説することが決まっていました。過密なスケジュールの合間を縫って、“急遽”訪問することは不可能です」

 一方、生稲議員とともに施設を訪問した萩生田光一政調会長(58)について、全国紙政治部デスクはこう語る。

「萩生田氏は、安倍派のなかでも、選挙地盤の弱い若手議員を統一教会の関連団体などに紹介する役割を担っていたと聞いています」

“脱統一教会”を掲げた第二次岸田内閣にとっては痛手だが、そこには岸田文雄首相(65)の思惑もあるという。

「そもそも岸田首相は、萩生田氏が生稲氏を教会施設に連れて行ったことを、内閣改造前に知っていたというのです」

 そう語るのは、別の政治部記者。

「今回の内閣改造で、岸田首相は安倍派を追い詰めすぎて“反岸田”で結束させてはならないと考えていました。そのため、萩生田氏を手元に置く必要があったのです。

 萩生田氏が希望した経産相ではなく、党四役である政調会長に起用したのは、『統一教会問題もあり、今回は大臣のポストは与えられないが、それでも岸田首相は萩生田氏を重要視している』というメッセージでした」

 政調会長として岸田首相になにかと注文をつけていた高市早苗氏(61)は、経済安保相に起用された。

「部下のいない特命相で、実質的に格下げですが、かねてから高市氏は経済安保を“ライフワークだ”と公言しており、断わりにくいポストなんです。閣僚序列を2位にして、岸田首相は高市氏を支持する岩盤保守への配慮も忘れませんでした」(同前)

 高市氏は14日、人事への不満とも取れる〈今も辛い気持ちで一杯です〉というツイートをしている。そんな高市氏のカウンターパートが、萩生田氏に代わって経産相になる西村康稔氏(59)だ。

「西村氏と高市氏はともにポスト安倍候補で、協力体制を組むのは難しいでしょう。

 また、西村氏は通商産業省出身で、まだ省内には西村氏より入省年が早い先輩官僚が残っています。西村氏得意のスタンドプレーはやりにくいでしょう。考え抜かれた組閣だと思います」(同前)

 飢えた二頭の虎を互いに争わせる「二虎競食の計」。『三国志』で、朝廷を支配するようになった曹操は、劉備に領地の長官のポストを与える一方で、呂布を討つよう密書を送る。それは、劉備と呂布が手を組むことを恐れ、ともに弱体化させるために曹操が仕組んだ罠だった。

 岸田首相による安倍チルドレンへの“競食の計”というわけだが、発動する前に事態が思わぬ方向へ動きつつある。自民党都議が明かす。

「公明党の東村邦浩都議が萩生田さんと生稲さんの統一教会施設訪問の話を聞き、激怒しているというのです」

 東村都議は創価大学卒で、当選6回の60歳だ。公明党東京都本部副代表、つまり高木陽介代表に次ぐナンバー2であり、都議会の公明党では長年幹事長を務める。

 大臣職を歴任した大物国会議員である萩生田氏だが、東村都議に頭が上がらない理由があるという。自民党都連関係者が語る。

「萩生田氏の地盤である八王子には、創価大学や池田大作名誉会長によって創立された東京富士美術館など、学会関連施設が集中しています。当然、八王子で生活を送る学会員も多く、学会の大票田です。

 萩生田氏が昨年の衆院選で得票した15万票のうち、3割近い約4万4000票を学会票が占めているといわれています」

2に続く

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8/23(火) 6:00
https://news.yahoo.co.jp/articles/ef7e3934d8cb19280ec579b39239fed05e0bfd96