政府は15日、電力料金の上昇の負担を軽減するため、節電をした家庭や企業にポイントを還元する制度を導入する検討を始めた。電力会社がアプリなどを使って既に実施している還元制度を利用。前年より節電した家庭などにポイントを還元することを想定している。

 岸田文雄首相は15日の記者会見で、電気料金については「直ちに値上がりしない料金制度とし、家庭用電気料金の上昇幅を欧州の3分の2程度に抑えている」と強調。電力需給への影響にも言及し「省エネと節電の徹底のための措置を早急に公表する」と述べた。

 政府は7日、7年ぶりに家庭や企業に対して節電を要請。家庭での室温を28度にすることなどを呼びかけた。政府が節電ポイント還元制度の導入を検討するのは、電力需給逼迫(ひっぱく)による大規模停電が起きかねないという危機感からだ。休止中の火力発電所再開など供給サイドの対策も急ぐが、まずは需要面から働きかけて実効性を高める狙いがある。

 経済産業省は今夏の電力供給の余力を示す予備率について、3・1%まで低下すると予測している。この数字は電力需給逼迫警報を発令する水準(予備率3%未満)に近い数字であり、経産省幹部は「事故や災害などで発電所が一つでも止まれば、いつ大規模停電が起きてもおかしくない」と危機感を強めている。

 電力不足の背景には脱炭素に向けて老朽化した火力発電所の休廃止のほか、3月の福島県沖地震による発電所停止や原発の運転停止の長期化がある。政府は老朽化で休止中の火力発電を改めて運転させるなどして供給力確保を進めるが、数が限られる上、故障のリスクが高く「引退した選手をグラウンドに下ろすようなもの」(萩生田光一経産相)と懸念を示していた。

 政府は節電を要請したが、数値目標は示しておらず、ポイント還元制度の導入で節電へのインセンティブ(動機付け)を高めるとともに、電気料金値上げなどの物価高対策にもつなげる狙いがある。

 また、電力事業者支援の側面もあるとみられる。東京電力エナジーパートナーは7~9月、要請に応じて電力消費を標準より抑えた家庭に1キロワット時あたり5ポイントを付与すると8日に発表している。ポイントはアマゾンギフト券などに交換できる。

 ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、火力発電の燃料となる液化天然ガス(LNG)や原油、石炭などの価格が高騰し、事業者の経営を圧迫している。電気料金値上げに踏み切った事業者も多いが、価格転嫁しきれていないのが現状だ。政府による節電の後押しは、コストを減らしたい事業者にとって「渡りに船」となりそうだ。【源馬のぞみ、遠藤修平】

毎日新聞
6/16(木) 9:05
https://news.yahoo.co.jp/articles/58ebbd2288ae1a0bcf01b20247dfee50511f671e