元外務次官の竹内行夫氏の著書「外交証言録 高度成長期からポスト冷戦期の外交・安全保障 国際秩序の担い手への道」が岩波書店から刊行された。ロシアとの北方領土交渉を巡り、安倍首相(当時)が事実上、「2島先行返還」にかじを切ったことについて、「日本政府と国民に残された『負の遺産』」と厳しく批判している。

竹内氏は、小泉政権下の2002年から約3年間、外務次官を務めた。著書は、4島の帰属問題を解決して平和条約を締結するとした1993年の「東京宣言」が交渉の基盤だと強調。2018年に安倍氏がシンガポールでのプーチン露大統領との会談で方針を転換し、2島返還を軸としたことを、「国家主権を自ら放棄した歴史上初めての宰相」になりうると非難した。

 03年のイラク戦争に関しては、日本が主体的に貢献策を検討したほか、日本の米国への働きかけが、単独行動から国際協調へと米国の政策転換を促したと指摘。「日本政府が米国に追随した」との見方は、「歴史として定着させることは正しくない」とした。

読売新聞
2022/04/21 18:57
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