これはもう「暴挙」としか評しようがない。東京五輪で金メダルを獲得した女子ソフトボール日本代表・後藤希友選手の栄光に傷がつけられた。前代未聞の愚行を犯したのは、名古屋市の河村たかし市長である。

 日本のピンチを何度も好救援で救い、金メダル奪取に大きく貢献したヒロイン。その後藤選手が4日に出身地である名古屋市役所を表敬訪問し、13年越しの連覇達成を報告したところで“事件”は起こった。後藤選手に金メダルを首に掛けてもらって大はしゃぎした河村市長が手に取ってから「重たいな」とつぶやくと何を血迷ったのか、突然マスクを外して「がぶり」と噛みついてしまった。

■ 「ごめんなさい」では済まされないレベル

 当たり前の話だが、後藤選手は事前に何も知らされていない。想定外の出来事にも何とか大人の対応を貫いていたものの、内心で計り知れないショックに見舞われていたことは言うまでもあるまい。周囲の市役所関係者も誰一人として、このようなハプニングが起こり得る可能性など予期していなかったことから大混乱に陥っている。今も名古屋市役所には抗議の電話やメールが殺到しており、その対応に追われているという。

 さらに呆れ果てたのは河村市長の釈明である。当人から「(メダルをかむ行為は)最大の愛情表現だった。迷惑をかけているのであれば、ごめんなさい」とのコメントが多くのメディアを通じて世に出されたが、かえって火に油を注ぐ格好となってしまったようだ。「最大の愛情表現」「迷惑をかけているのであれば」などと弁明にすらならない子供染みた詭弁と反省の色がまるで見えない態度を並べ、最後に「ごめんなさい」と相手を小ばかにするかのような軽い言葉で締めくくっている。他人の栄光を踏みにじる“重罪”に及んでいながらも一応の謝意を示しただけで幕引きを図ろうと画策しているのだから、開いた口が塞がらない。ネットやSNS上でも河村市長への批判が大炎上し、収束の見通しが立たない状況となっている。

そりゃあ、そうだ。選ばれた人しか手にすることのできない栄光の金メダルに赤の他人のオッサン(というよりも爺さん)の「唾液」と「歯形」をつけられ、喜ぶメダリストなんていくら世界広しといえど、まずいないだろう。正直に言わせてもらうが「汚い」し「不潔」極まりない。ましてやコロナ禍の時代、握手すらNGにもかかわらず噛みつき行為が一体どのような危険性に直結するのかを、この名古屋市のトップは全く理解していなかったということになる。

■ ソフトボール界の重鎮からも「怒りの声」

 その同日夜、ちょうど別競技の取材で奔走していた時、筆者の携帯に連絡が入った。

 「あのふざけた“噛みつき”見ましたか?  私はもう腹が立って、腹が立って・・・。後藤君が一番悔しくて悲しい思いをしているはずですが、このニュースを知って私も涙を流しましたよ。あの市長は彼女たちが、どれほど死に物狂いになって金メダルを取ったのか、全く分かっていない」

 スマホの通話用スピーカーから聞こえてきた怒りの大声の主は、日本ソフトボール協会(JSA)の創成期から携わっている重鎮OBであった。聞けば、河村市長の愚行は「JSAの中でも大問題になっている」という。

 「とにかく喧々諤々。愛知県は無論、全国の下部組織からも怒りの声が渦巻いています。栄光の金メダルを唾液で汚し、噛みついて傷をつけたのだから刑事事件として立件可能なのではないか。愛知県警に動いてもらい、器物損壊罪で河村市長は逮捕されるべきなのではないか、などといった強硬な意見も数多く出ているほど。

 これは決してオーバーに話しているわけでありません。河村市長という男は、本当に許せないですよ。あの噛みつきは後藤君に対してだけではなくソフトボールの日本代表チーム、いや日本ソフトボール界全体に対する侮辱です。河村市長はソフトボール界の怨敵になったと言い切ってもいいと思います」

 とも続け、かなり憤っていた。

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JBpress
8/5(木) 11:50
https://news.yahoo.co.jp/articles/48c1ce6b91baf5ab3a91d2fa3f1eacaf617cca2f