西村康稔経済再生担当相が酒類販売事業者に酒類を提供する飲食店との取引停止を要請した問題で、与党内から苦言が相次いだ。衆院選が間近に迫る微妙な時期だけに、自民党は業界団体との摩擦に神経をとがらせており、新型コロナウイルスの感染防止対策としていったんは「強硬策」を打ち出した政府も、世論の反発を考慮して要請撤回に追い込まれる見通しだ。

「権力の乱用」雰囲気、つながる

 「ご心配をおかけしました」。菅義偉首相は13日昼、公明党の山口那津男代表と首相官邸で会食し、一連の西村氏の発言を謝罪。山口氏は記者団に「(飲食店や業界に)自発的に協力していただく努力が大事だ」と指摘した。

 西村氏は8日の記者会見で、休業要請に応じない飲食店に取引金融機関から働きかけるよう求めるとともに、酒類販売事業者にも飲食店との取引停止を要請する考えを表明。金融機関についての発言は9日に撤回していた。

 公明党の漆原良夫顧問は12日付の自身のブログで、「卸売業者に優越的地位を利用して政府の意に従わない飲食店に圧力をかけさせる手法は、健全な行政の執行とは言えない」と痛烈に批判。自民党の二階俊博幹事長は13日の党総務会で「誤解を受けることがないよう、発言には慎重を尽くしてほしい」と西村氏を念頭に苦言を呈した。自民の世耕弘成参院幹事長は、コロナ対策に追われる西村氏について「多忙を極め、飲食業を中心とする現場の声が聞こえなくなっているのではないか」と懸念した。

 業界や世論の強い反発を浴びた政府は、…

毎日新聞
2021/7/13 20:04
https://mainichi.jp/articles/20210713/k00/00m/010/289000c