「羽田王国」継続か、自民党の議席奪還か――。立憲民主党の羽田雄一郎・元国土交通相の死去に伴う参院長野選挙区補選(4月8日告示、25日投開票)の告示まで1カ月を切った。立憲は羽田氏の弟次郎氏(51)、自民は元衆院議員の医師、小松裕氏(59)の擁立を決めており、与野党の新人による事実上の一騎打ちになる見通しだ。【島袋太輔、鈴木英世】

鍵は野党共闘

 羽田氏の地元、上田市で6日にあった事務所開き。立憲民主党県連代表の篠原孝・元副農相(衆院長野1区)は「ダブルスコアで勝たせていただきたい。その勢いを(衆院)総選挙に向けたい」と支持者に訴えた。今年は衆院選が必ず行われるだけに、勝ち方にこだわる姿勢を強調する。

 野党勢力は2016、19年の参院選に共闘で臨み、自民の候補に大差を付けて勝利してきた。今回も立憲、共産、社民と市民団体で構成する「信州市民アクション」で政策協定を結び、非自民勢力の結集を図る。羽田氏は「兄(雄一郎氏)も父(孜元首相)も『自民党に対抗しうる政治勢力を結集する』との思いで政治活動を行ってきた。私も継承していきたい」とその受け皿になる意欲を示す。

 気掛かりなのは、過去2回の参院選で各党間の調整を担ってきた元県議で立憲県連選対委員長代理の倉田竜彦氏が2月に死去したことだ。ある野党関係者は「中心になってやってくれていた。『影響がない』と言うことはない」と不安がる。望むような結果を得られるかどうか。野党共闘がどれだけ機能するかが鍵になる。

自民 党本部が引き締め

 「経済界も医療も一緒になって前に進む。その役割を担わなければいけない。医療と経済は対立するものではない」。4日、長野市内のホテルで、小松氏は県内の経済団体代表者らにこう強調した。

 19年参院選で、小松氏は雄一郎氏に約15万票の大差を付けられ敗北。落選中、医師である小松氏は新型コロナウイルスの感染拡大を目の当たりにし、「暮らしと命を守ることができるのは政治。志した原点を思い出した」と立候補を決意した。

 前回選は国会議員や県議の連携不足が指摘された。今回は菅政権初の国政選挙で注目を浴びており、党本部が目を光らせている。公認決定後、党本部の山口泰明選対委員長が何度も来県してこ入れ。前回選は県議が衆院小選挙区ごとの責任者だったが、今回の補選は衆院議員ら選挙区支部長が責任者に就任し、票固めに奔走する。

 今秋までに必ず行われる衆院選に向けた対策の側面もあるが、陣営関係者は「今回は小松選対ではなく自民党選対としての戦いだ。党本部が引き締めており、支部長らの働き度合いは票数で確認できる」と指摘した。

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 補選には、NHK受信料を支払わない方法を教える党職員の神谷幸太郎氏(44)が同党公認で出馬を表明している。

毎日新聞
2021/3/8 21:43
https://mainichi.jp/articles/20210308/k00/00m/010/280000c