森喜朗元首相が女性蔑視発言で東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長を辞任した騒動は、後継選びを巡って混乱も招き、世界中に醜態を晒した。

 政府関係者によると、森会長が後継指名した川淵三郎・日本サッカー協会相談役の新会長就任が一夜にして白紙になったのは、IOC(国際オリンピック委員会)サイドの介入だったという。

「混乱の原因は森会長が後任について、官邸が橋本聖子氏を推したにも関わらず、聞き入れず、川淵氏の後継の流れを強引に作ったことにあります。組織委会長人事はワンマン企業の社長人事とは訳が違います。後継指名などあるはずもないのに暴走し、IOCがこれに激怒しました」(前出の政府関係者)

 IOCは今回の騒動で菅総理の事態の収拾能力のなさにも失望したという。菅総理は当初、かつて森氏がオーナーだった最大派閥である細田派への配慮もあり、自ら動くことを拒否し、橋本五輪大臣を経由した厳重な注意を伝達するのみで、「組織委員会で決める問題」というスタンスを崩さなかった。

 すると、欧米のアスリート、スポンサーなどから批判が相次ぎ、静観していたIOCのバッハ会長は慌てて、「完全に不適切」との声明を発表。それでも菅政権は「誰が森氏に鈴をつけるか」で混乱するばかりだった。

 こうした中で、決定打を放ったのは、小池百合子都知事だった。森氏とバッハ会長が決定した4者会談への出席を10日、「今、ここで開いてもあまりポジティブな発信にならない」と拒否してみせた。

「前夜には二階俊博幹事長と会談しており、森降ろしの流れを作ったのではないかと憶測を呼びました。開催都市トップの一撃に官邸、組織委は衝撃を受け、森氏の心もついに折れ、続投断念を決意しました。しかし、IOCや菅総理から『女性を後任に』と求められても、森氏は無視。逆に菅総理に『後任が川淵さんだったら辞めてもいいがそれ以外はだめだ」と迫り、菅総理もいったんはしぶしぶ飲んだ」(自民党関係者)

 森・川淵会談により、川淵氏後継の流れを完全に作り、森氏の思惑通りに事態は進んだという。

「川淵氏から『就任の条件として森氏が名誉職として残ること』を提案させた上で森氏は了承。ここまでは森氏ペースだったが、IOCサイドが川淵氏に強く難色。理由は過去の差別的発言などでした。この一撃で事態が動きました」(前出の自民党関係者)

 そんな中、ワシントンポスト紙は<森会長が女性蔑視発言の撤回、謝罪会見を開いた後に、当初、政府関係者や自民党幹部などが“続投”を後押ししていたことを「日本の古参で保守的な男性エリートの当初の反応は(社会の)怒りに耳を貸そうとしないことだった>と批判。さらに森氏が後任に川淵氏を選んだことについても一部から疑問の声が出ていることも紹介した。川淵氏はこうした流れの中で会長を辞退し、新会長選びの混乱は今も続いている。

 内外のメディアからはこのままだと東京五輪の開催可否の重大判断がきちんとできない可能性も懸念されている。(本誌取材班)

週刊朝日
2/14(日) 12:14配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/9f5eb04b9e9a50bc39ca3c6b69d6363670d42cef?page=1