「一体何様だと思ってるんだ! 内政干渉まがいのことまでしてきたんですよ、日本は!!」

 日本政官財界に精通する台湾財界人は声を荒らげる。開業カウントダウンの段階で乗務員教育を拒否され、台湾高速鉄道は独仏から運転士起用を余儀なくされた。すると日本から運転士起用を担当していた米系中国人の幹部更迭を求められた、というのだ。

「それに今回の入札価格はなんですか?」

 日本企業連合の今回の入札価格は日本の国内価格の倍以上で、最新型新幹線車両と全く同じでないと売らない、と台湾が決して必要ない装備まで押し付けてくるのだという。この財界人は今回の入札を日本にはびこる悪徳商法になぞらえる。

「日本は今でも、台湾は大日本帝国の言うことを何でも聞く植民地、台湾人を二等国民だと思ってるんじゃないですか? そうでなければ、こんなことできるわけもない」

 日台親善の象徴、日本インフラ輸出唯一の成功例と麗しくうたわれる台湾高速鉄道も一皮むけば、台湾側からは怨嗟の声しか聞こえてこない。また、日本人の多くが信じ込んでいる親日台湾、これとて一皮むけば、植民地支配を恨む台湾人、日中戦争の歴史的責任を追及する台湾人が少なからずいることに頬かむりした日本人の思い込みでしかない。日本には過酷な台湾の現実が、財界人の怒りの炎の向こう側に見え隠れする。

 さて、新幹線は世界一の高速鉄道技術と安全運行システムが金鵄勲章だと前回記した。これを台湾、そのほかの輸出対象国はどう見ているか?

「新幹線は日本の地形、気候に合わせて開発されたもの。それを違う条件の中で使用すれば日本国内での“世界一”がそのまま通用するわけないんじゃないですか?」

■新幹線は「ガラ携」か

 台湾高速鉄道関係者は日本人が信じ込んでやまぬ金看板に疑問を呈する。それはあたかも日本の携帯電話技術にうぬぼれている間にスマートフォンに追い越され、日本だけの中で世界に通用しない進化を遂げてしまったガラ携ことガラパゴス携帯にさも似たり、ではないか?

 それを出所したばかりと偽って猿股のゴム紐を強談判して追い売りする古典的商法で迫られれば拒否するというのが人情であり、ビジネスの常道である。

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