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韓国政府の「楽観論」

写真:現代ビジネス

 1月8日午前10時過ぎ。ソウル中央地裁は旧日本軍の元従軍慰安婦の女性らが日本政府に損害賠償を求めた訴訟で、日本政府に原告1人当たり1億ウォン(約950万円)の慰謝料支払いを命じる判決を出した。この報告を受けた日本政府は、やり場のない怒りと脱力感に包まれたという。政府関係者の1人は「だから、あれほど警告したのに。韓国には、まるでこちらの危機感が伝わっていない」と嘆いた。

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 この関係者の言葉通り、日本政府は随分前から、この訴訟について韓国側に警告を発していた。東京でもソウルでも、職位の高低を問わず、国家は外国の裁判権に服さないとする国際法上の「主権免除」の原則に則り、日本は裁判に出廷しないと説明。同時に「仮に損害賠償が認められたら、大変なことになる」「今度は、日本国民の税金が使われた資産が対象。徴用工判決も重大な問題だが、それ以上に破壊的だ」などと伝えていた。

 ところが、韓国外交省の反応は、判で押したように「三権分立なので司法には介入できない」というものだった。同時に、日本が主張する「主権免除」がおそらく適用されるだろうという楽観論を展開し、「そんなに心配するな」と言わんばかりの姿勢だったという。韓国政府からは結局、ソウル中央地裁がどういう考えなのかについて説明はなかった。

 別の日本政府関係者は「別に介入じゃなくても、言いっ放しで良いから、外交上の影響があると(裁判所に)伝えれば良いじゃないか」と憤る。実際、韓国の憲法裁判所は2011年8月、韓国政府が日本と外交交渉をしないことが憲法違反にあたると判断したが、このときには公開弁論が行われ、慰安婦や外交通商省(現外交省)関係者が出廷し、1965年の日韓条約に基づく請求権協定の経緯や趣旨などについて説明している。

 これに対し、外交省側の反応は「そんな恐ろしいことはできない」というものだった。 韓国検察は2018年8月、朴槿恵(パク・クネ)前政権下の大法院(最高裁判所)が、日本統治時代の元徴用工らの民事訴訟に違法な介入をした疑いがあるとして、関係先の韓国外交省を家宅捜索した。外交省は朴前政権当時、対日関係改善のため、大法院が決定を早く下すことに反対しており、何らかの介入を行ったとみられたためだ。韓国外交省はこの前例を念頭に置いていたのか、今回の日本側に対する姿勢は「あんな目には二度と遭いたくない」という、おっかなびっくりの態度だったという。


(略)