とにかく早く国会を閉じて野党の追及から逃れたい――。安倍首相周辺が計画していた「逃げ恥作戦」に、狂いが生じはじめている。

 安倍首相は会期末の17日に国会を閉じ、月末、アメリカに飛んでG7サミットに参加する予定だった。現在、渡米した人は、帰国後2週間、隔離生活を要請される。本人は隔離生活を過ごした後、そのままフェードアウトする形で夏休みに突入するつもりだったようだ。ところが、トランプ大統領がG7の延期を突然発表。“海外脱出”は、計画倒れに終わった。

「とにかく安倍さんは国会が嫌い。国会会期中はストレスがたまる。だから、国会が閉会すると毎年、ストレス解消のために外国に出掛けています。外遊すれば支持率も上がる。とくに、支持率が下落している今年は、局面転換のためにも、どうしても外遊したかった。ところが、G7が延期になった。安倍さんは相当ガッカリしているようです」(自民党事情通)

 秋に臨時国会を開かないで済むように、第2次補正予算案に10兆円という巨額の“予備費”を計上したことも、裏目に出ている。予備費は、国会の承認を得なくても、政府の裁量で支出できる予算。第2次補正予算の総額は32兆円。その3分の1を、あらかじめ使い道を決めない「予備費」に充てている。秋に感染拡大の“第2波”“第3波”が襲ってきても、国会を開かず、対策を打てるようにするためだ。

■10兆円予備費には批判のハッシュタグ

 しかし、10兆円という空前絶後の予備費に対し、「#予備費10兆円も三権分立を壊します」などのハッシュタグが立ち上がり、安倍批判が起きている。

<国民の信託を受けた国会が口を出さずに使える10兆円を、内閣の一存で運用されたくありません。国会の行政監視機能を無効化することになります><専門家会議の議事録さえ作らなかった政府なら、10兆円という予備費は、そのまま使途不明になりかねない>

 国会を開きたくないために10兆円の予備費を計上した結果、自ら国民の不信と批判を招いた形だ。立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)が言う。

「国会が予算を決めるという“財政民主主義”の観点からも、10兆円の予備費は問題があります。白紙委任となり、予算審議の意味もなくなる。とくに安倍政権は、モリカケ桜と、税金を私物化した疑いを持たれている。国民が批判するのも当然です」

 サミットも延期になったのだから、こうなったら国会を延長し、通年国会とすべきだ。

日刊ゲンダイ
2020/06/01 14:50
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