新型コロナウイルス感染症の患者が自宅療養中に容体が急変したり、家庭内感染が起こったりするケースが相次ぎ、厚生労働省は23日、軽症者や無症状者についてホテルなど宿泊施設での療養を原則とする方針を明らかにした。国は軽症者らについて、自宅を含めた病院外での療養を求めてきたが、医療機器の備わった宿泊施設で容体変化に対応できるようにする。

 患者が急増する中、病院では重症者の治療を優先するため、厚労省は今月2日、高齢者・妊婦などを除き、軽症者らは自宅か宿泊施設での療養とする方針を示した。大阪府のように宿泊施設を優先させる自治体もあるが、神奈川県では22日現在で61人が自宅、65人が宿泊施設にいる。

 自宅療養の場合、保健所が1日1、2回、患者に電話などで体温、せきなどの症状の有無を聞き取り、悪化したらすぐに入院してもらう流れになっている。だが、厚労省が宿泊施設には置くよう求めている血中酸素濃度を測る機器「パルスオキシメーター」を使えないなどの課題がある。

 加藤勝信厚労相は23日、記者団に「子どもがいるなど、どうしても自宅にいる必要がある人を除いて、基本的に宿泊療養を考えてほしい」と述べた。ただし、自治体による宿泊施設の準備が整わなければ自宅療養も認める。

 専門家は新型コロナ感染症の容体管理の難しさを指摘する。肺炎になると徐々に酸素を取り込む機能が落ちていくが、すぐには息苦しさなどを感じることはない。だが、血中の酸素濃度が一定のレベルまで下がると急激に重症化する。石蔵文信・大阪大招へい教授(循環器内科)は「自覚症状だけで判断せず、酸素濃度を測るなど医学的な管理が欠かせない」と指摘する。

 自宅療養を続けざるを得ない場合は、患者自身が体調管理することになる。自治医大病院の森沢雄司感染制御部長は「せきが止まらず息切れの症状が出たら、一気に重篤化する危険性がある。遠慮せず医療機関を受診してほしい」と呼びかける。【原田啓之、村田拓也、渡辺諒、小鍜冶孝志】

毎日新聞
2020年4月23日 20時53分
https://mainichi.jp/articles/20200423/k00/00m/040/226000c