[大弦小弦]朝鮮と沖縄 保革一致の切り捨て

87歳になる風間作一郎さんは、ちょうど60年前の行動を今も悔やんでいると明かす。
「帰れ帰れ、と勧めてしまった。夢の国なんて宣伝は全部うそだった」。1959年12月、在日朝鮮人らの北朝鮮への帰国事業が始まった

▼新潟市が出港の地に選ばれ、地元の社会党員だった風間さんは送迎や警護に当たった。社会党だけではない。
自民党も共産党も、経済界も労組も、各界各層が協力した

▼植民地支配の結果、日本に住んだ朝鮮人を戦後になって厄介者扱いした保守側と、社会主義の優位を宣伝したかった革新側。
北朝鮮も宣伝効果と労働力を欲していた。関係者の思惑が奇妙な一致を見せた

▼当時、沖縄を巡る状況も似ていた。60年の日米安保条約改定に向け、政府は適用範囲にまだ復帰前だった沖縄を含めようとした。
しかし保守側は核兵器を持ち込みにくくなる、革新側は沖縄を起点に米国の戦争に巻き込まれる−と懸念し、そろって拒否したのだった

▼敗戦の45年の暮れ、朝鮮と沖縄の人々が選挙権を奪われたのも同時だった。
日本の都合で併合され、真っ先に切り捨てられる。差別に翻弄(ほんろう)された歩みが重なる

▼北朝鮮に帰国した約9万3千人はその後飢えと圧政に苦しみ、安否さえよく分からないまま。沖縄は安保の重圧に苦しんだまま。日本社会は、何ら清算しないままだ。(阿部岳)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/514062

阿部 岳(あべ たかし)
沖縄タイムス社編集委員
1974年東京都生まれ。
上智大学外国語学部卒。97年沖縄タイムス社入社、政経部県政担当、社会部基地担当、フリーキャップなどを経て現職。
著書 国家の暴力 現場記者が見た「高江165日」の真実(朝日新聞出版)。
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/70787

参考
沖タイ阿部岳記者「朝鮮と沖縄は同じ。日本の都合で併合され真っ先に切り捨てられた」
http://hayabusa9.2ch.net/test/read.cgi/news/1577072246/l50