公的年金の次は、医療をボロボロにするつもりのようだ――。厚労省は、患者が自らの「かかりつけ医」を登録し、診察料が月単位の「定額制」になる制度の検討を始めた。


 一定の診察料を払えば、医者に「かかり放題」。支出を気にせず診察を受けられ、医者をよく利用する患者にはおいしい制度に思える。だが、本当の狙いは医療費の伸びを抑えること。飛びついてはいけない。

「定額制で頻繁に来る患者の診察を繰り返しても、その分、診療報酬が増えるわけではなくなるのです。病院はできるだけ定額制の患者が来ないように誘導し、来院しても手間や費用をかけない診療になってしまうでしょう。その結果、定額制の患者に対して、医学的に本当に必要な診療がおろそかになる可能性が高い。別に医者が悪いというわけではなく、定額制になれば、医者がそのように考えるのは経済合理性からは当然です」(医療関係記者)

■“招かざる患者”扱い


 定額制で何度も通えても、医者から“招かざる患者”扱いされ、全力の充実治療は期待できない。これでは、治るものまで治らないじゃないか。

 社会保障に詳しい立正大客員教授の浦野広明氏(税法)が言う。

「厚労省は、安心できる年金や医療の制度構築ではなく、どうやってうまく社会保障費を抑えるかに“知恵”を絞っているようです。最近も〈年金請求書〉で『年金額を増額させますか?』と尋ね、自動的に年金の繰り下げ受給に誘導される手口が問題になりました。医療費の定額制は、医者に治療を控えようというインセンティブが働き、医療費抑制の効果は絶大です。それを、患者からすれば“バラ色”にみえる定額制で普及させようとしているのです。これも医療の質を低下させる恐れがあり危険です。安倍政権下での社会保障関連の“おいしそうな話”はすべて疑った方がいいでしょう」

 安倍政権は優秀な官僚の悪知恵を結集し、年金も医療も「姥捨て制度」にしようとしている。

日刊ゲンダイ
19/06/27 06:00
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