2019年5月24日 夕刊


 陸上自衛隊が導入する米国製の垂直離着陸輸送機オスプレイが、千葉県木更津市の陸自木更津駐屯地に暫定的に配備される方針が決まり、防衛省は二十四日、市に伝達した。地元の住民らからは、オスプレイの安全性や、恒久的な配備につながることを懸念する声が上がった。

 市内の住民団体「オスプレイ来るな いらない住民の会」は同日朝、市役所前で抗議活動を行った。メンバー十人が「オスプレイ飛ばすな」などと書かれたプラカードを手に、「日本の空にいらない」「木更津駐屯地への暫定配備反対」などと声を上げ、二十五日に市内で開くオスプレイの現状について学ぶ勉強会への参加を呼び掛けるチラシを配った。市職員らの通勤時間帯だったが、足早に通り過ぎる人が多かった。

 抗議活動に参加した同会事務局長の野中晃さん(79)は「防衛省は駐屯地内で行われている米軍オスプレイの定期整備でさえ、丁寧な説明をしないのに、陸自が暫定配備するなんて言語道断だ」と批判。「暫定的にでも配備されれば、恒久的に配備する口実を与えかねず、駐屯地の機能強化につながるだけだ」との懸念を示した。

 不安の声は、駐屯地近くの住民からも上がった。会社員の鈴木加奈子さん(34)は「世界各地で事故が相次いでいるので、墜落しないか不安で仕方がない。わざわざ配備する必要なんてないのに」と話した。 (山口登史)

◆市長「事前説明なく不快」 副大臣「空中給油訓練 当面ない」

 防衛省側との面談会場となった木更津市役所八階の会議室に、原田憲治副大臣は予定より数分遅れて入った。渡辺芳邦市長ら市側は硬い表情で迎え、用意された資料に視線を落とし、防衛省側の説明を聞いた。冒頭、渡辺市長は、暫定配備に関する報道が市への説明前に相次いだことに「不快感を覚えた。失礼だ」と述べた。

 渡辺市長は地元住民と駐屯地との歩みに触れ「市民と良好な関係を保ってきた。信頼関係が大切。暫定配備はまだ決定していないという理解でよいか」と、防衛省側にくぎを刺した。

 面談後、原田副大臣は報道陣の取材に応じ、暫定配備について「丁寧に説明して、了解いただければ」と述べた。安全性への配慮について「事故の懸念のある空中給油など、いきなりそういう訓練は考えていない。まずはパイロットの熟達から入りたい」と話した。

 渡辺市長は面談後の記者会見で、安全対策で具体的な説明がなかったことから、引き続き防衛省側に説明を求める考えを示した。受け入れるかどうかの判断時期について、「今、いつまでにということはない」と具体的なスケジュールは決まっていないとした。(山田雄一郎、山口登史)

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