【ワシントン=河浪武史】米ブルームバーグ通信は15日、トランプ米大統領が日本と欧州連合(EU)を対象に、自動車輸出の制限を求める大統領令を検討していると報じた。自動車への追加関税の発動を延期する代わりに、日欧に対米輸出を制限する策を180日以内に講じるよう求める内容だ。日本は輸出数量規制に強く反対しており、実際に発動されれば日米の対立は必至だ。

トランプ政権は安全保障を理由に自動車に25%の追加関税を課す新たな貿易制限を検討しており、今月18日に発動の可否を判断する期限を迎える。ただ、180日間は判断を先送りできる規定となっており、米経済への影響が大きい関税の発動を当面延期する方向だ。

ブルームバーグ通信によると、関税発動を延期する代わりに、2国間の貿易交渉が妥結していない日本とEUを対象に、自動車輸出に上限を設けたり抑制策を講じたりするよう求める大統領令を検討している。トランプ氏が米通商代表部(USTR)に日欧との交渉加速を指示し、180日以内に交渉を取りまとめるよう要請する。

日米は物品貿易協定(TAG)交渉を開始し、農産品と自動車を中心に早期に合意案を取りまとめる方向で一致している。米国はカナダやメキシコに対し、自動車輸出に上限を設ける数量規制を要求し、新しい北米自由貿易協定(NAFTA)に盛り込んだ。日本にも産業界への影響が大きい数量規制を要求する可能性があるが、日本は世界貿易機関(WTO)ルールに違反するなどとして、強く反対する立場だ。

日本経済新聞
2019年5月16日 7:15
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44862650W9A510C1000000/