統一地方選、後半戦の最大の注目となっている衆院大阪12区補選(21日投開票)が“激熱”だ。

 自民公認候補の北川晋平氏と日本維新の会の藤田文武氏がデッドヒートを繰り広げる中、安倍晋三首相が20日、大阪12区に入り。1つの選挙区では異例の3か所で応援演説した。

 同午後2時すぎ、安倍首相が最後の演説のため、京阪電車の寝屋川市駅ロータリーにやってきた。

 そこに待ち構えていたのは、詐欺罪などの容疑で大阪地裁で公判中の、森友学園元理事長、籠池泰典と妻の諄子両被告だ。

 演説がはじまる前から、2人を自民党の関係者が立ちはだかるように取り囲み不穏な空気が流れる。

「あんた方、それでは演説がみれないよ。よけたらどう」

 籠池被告はこう猛抗議した。

 そんな中、安倍首相の演説がはじまると、諄子被告が大声で「ウソつき!」「なにを調子いいことばかり言ってるの」と声を張り上げた。

 すると、自民党を応援するグループが籠池夫妻を取り囲み、安倍首相の視線から2人が見えないようにプラカードを掲げる。

「こうやって守ってもらわないと演説できないのか。聞いていても、演説は下手やね。数字ばかり並べて自分の手柄と自慢するばかりや」

 籠池被告は手厳しく、安倍首相をこう批判した。すると、周囲からは籠池被告の声に呼応するように「安倍帰れ、安倍帰れ」と大きなコールが上がった。

 だが、安倍首相は気にする素振は見せなかった。

「以前、東京の演説では帰れコールに安倍首相が対抗して怒りの声を上げてしまい反感をかってしまった。大阪12区は大接戦だから、票に響く。籠池さんに反応しなくてよかった」(自民党の国会議員)

 安倍首相の演説が終わり、マスコミに囲まれた籠池被告はこう吠えた。

「忖度というのは命令があって、役人が動いてあったことをなかったことにしたり、ウソを突き通したりするんです。今日も安倍首相から私を隠そうとする忖度。これも命令があってのものでしょう。これで首相とはね…」

聴衆の若者から色紙にサインを求められると、得意の一句を詠んだ。

<春清し心のさざなみいかにすらむ>

 一方、大坂12区から去った安倍首相は、本誌の既報通り、大阪・なんばグランド花月(NGK)で行われた吉本新喜劇の公演に飛び入り出演した。
 
 現職首相が吉本新喜劇に出演するのはもちろん初めてで、座長のすっちー、ベテランの池乃めだからと一緒に安倍首相が舞台に立つと、場内はザワめいた。

 「安倍晋三です」と自己紹介すると、「ホンモノですか」と突っ込まれた安倍首相は「ほんまにホンモノ」と笑いを取ったという。

「沖縄3区で負け、大阪12区も落すと、間違いなく党内政局がぼっ発する。安倍首相とともに麻生副総理や甘利選対委員長も一緒に大阪に入ったことでもその危機感がわかる。“令和”解散で衆参ダブル選挙もあるかもしれない」(前出自民党の国会議員)

 籠池劇場から吉本新喜劇と話題作りに余念がない安倍首相だが、この難局を乗り切れるのか。(今西憲之)

※週刊朝日オンライン限定記事
更新 2019/4/20 18:22 週刊朝日https://dot.asahi.com/wa/2019042000025.html