21日に投開票が迫った衆議院の補欠選挙。大阪12区と沖縄3区でともに劣勢の自民党では、早くも“戦犯”探しが始まっている。真っ先に名前が挙がるのが、甘利明選対委員長だ。URを巡る口利き疑惑で失脚、裏ガネ問題を引きずる人物を引き立て、重用してきた安倍首相は庇い切れるのか。

 大阪12区の補選では、安倍首相が投票前日の20日に大阪入りして応援演説を行う予定だが、これにも物言いがついた。甘利氏の仕切りが悪すぎたからだ。

 15日に大阪府内の候補者会合で、甘利氏が「自民党はこの選挙に総力を挙げる。総理も20日に大阪入りする。おそらく公明党の山口代表も総理とマイクを握ると思う」とブチ上げたことが大問題になっている。

「何の根回しもなく空手形を切った。寝耳に水の公明党は激怒しているし、ホンネでは大阪入りしたくない総理もご立腹です。盟友である甘利さんの顔を立てるために大阪に行くことになりましたが、負けが濃厚な選挙に総理を投入するなんて、さらし者にしたいのでしょうか」(官邸関係者)

■党内にも「裏金疑惑の説明責任を果たせ」

 公明党の斉藤幹事長は17日、自民党の二階幹事長に「山口代表の日程がタイトで、大阪行きは難しい」と説明。山口氏は周囲に「絶対に大阪入りはしない」と話しているという。

「ただでさえ厳しい選挙なのに、公明との間にすきま風で、自民新人の北川晋平候補は当選どころか3位に沈みそうな情勢です。衆院補選で自民系候補が負ければ、09年以来のこと。特に、弔い合戦は自民が得意とするところで、北川候補の叔父の死去に伴う大阪12区は、絶対に落とせない選挙でした。仮に沖縄とともに補選2敗となれば、政権へのダメージは大きい。甘利さんの責任を問う声が上がるのは当然です」(自民党関係者)

 統一地方選前半戦では、福岡と島根両県知事選で保守分裂となり、自民の推薦候補が敗れた。これも、甘利氏がゴリ押ししたせいだと言われている。

「これだけ敗戦記録を重ねると、選挙に勝てば自分の手柄で、負ければ幹事長のせいにする二重基準はもう通用しません。夏の衆参ダブル選をチラつかせてきたのも甘利氏ですが、解散は首相の専権事項なのに、勘違いも甚だしいと苦々しく思っている人は多い。首相のオトモダチだから選対委員長の要職に起用されましたが、補選も取れない選対委員長がダブル選で勝てるのか。『都合が悪くなると国会を休んで逃げてしまうような人物に選挙の仕切りができるわけがない』という声が、党内からも上がっています」(政治ジャーナリスト・角谷浩一氏)

 連敗の責任論が浮上するのは当然で、甘利氏に対する党内の不満は、いずれ任命した安倍首相にも向かう。

 大臣室で受け取った50万円の説明責任を果たさない甘利氏を庇うほど、安倍首相自身も窮地に陥ることになりそうだ。

日刊ゲンダイ
19/04/18 15:00
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