自民党の石破茂元幹事長は、夏の参院選での応援演説について、次期総裁選で支持を期待できる候補に厳選する構えだ。これまで頼まれるままに応じていたが、昨年の総裁選で国会議員票の積み上げにつながらなかった反省がある。政策でも安倍晋三首相の日ロ交渉への批判を強め、首相路線と一線を画す姿勢だ。

 石破氏には、今も党所属国会議員や地方議員から、講演や街頭演説の依頼が舞い込む。周囲に「選挙のお手伝いは誰よりもやっている」と力説する通り、これまでは全国どこにでも飛んでいったが、昨年9月の総裁選では、地方票で約45%を獲得したのに対し、国会議員票は2割を切った。
 このため、石破派幹部は「これまで使われっぱなしだったが、総裁選と結び付ける工夫をする」と語り、今後の応援演説は「戦略的」に対応していく考えを示した。

 もっとも、遊説先を選別することには、石破派内に「露骨過ぎると逆効果になりかねない」との声がある。他派閥の中堅議員も「踏み絵を踏ませるのか」と不快感を示しており、もろ刃の剣となる可能性がある。
 「安倍外交」への批判を強めることへのリスクも付きまとう。
 石破氏は12日の北方領土問題に関する派閥勉強会で、首相が歯舞、色丹の2島返還で手を打つとの見方が取り沙汰されていることに懸念を示してみせたが、代案があるわけではない。
 党内は「ポスト安倍」候補を含め、首相に外交交渉を委ねる空気が広がる。こうした中で石破氏が突出して異を唱えて党内の支持を得られるかは見えない。無派閥の閣僚経験者は「批判だけしていたら、『党内野党』で終わってしまう」と冷ややかに語った。

時事通信
2019年03月17日14時04分
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019031700289&;g=pol