厚労省に「実質賃金」検討会設置へ 参考値公表を事実上再検討

 根本匠厚生労働相は13日の衆院予算委員会で、毎月勤労統計の不正調査問題を受け、物価を勘案した実質賃金の「参考値」など統計のあり方に関する専門家の検討会を厚労省に設ける方針を示した。実質賃金の参考値については、野党は2018年の大半の月の伸び率が前年同月比マイナスになると試算し、政府にも試算の公表を要求。政府は当面公表しない構えだったが、統計不正への批判を考慮して事実上再検討する。

 厚労省は、前年調査から入れ替わらない事業所で賃金の伸び率を比較した参考値を、名目賃金についてのみ公表。野党は18年1〜11月の実質賃金の参考値の伸び率が「9カ月で前年同月比マイナス」と独自に試算している。

 根本氏は予算委で「(参考値の公表は)専門的検討が必要だ。検討の場を設けたい」と述べ、公表の可否も含めて専門家に委ねる考えを示した。厚労省幹部は2月2、4両日に専門家3人から電話と電子メールで意見聴取したと明かした。検討会を「結論先送りの時間稼ぎか」と警戒する野党議員に、根本氏は「毛頭ない」と気色ばんだ。

 この日も野党は統計不正とアベノミクスの「成果」の関係を追及した。勤労統計で調査対象の事業所を入れ替えると算出される賃金が大きく変動する点について、安倍晋三首相は「15年9月に国会答弁を準備する際、説明を受けた」と述べた。当時の首相秘書官が厚労省の担当者に「過去にさかのぼって数値が大幅に変わる理由や、実態を適切に表すための改善の可能性」などの問題意識を伝えていたことも明らかにした。

 同年10月には麻生太郎副総理兼財務相が経済財政諮問会議で、勤労統計の調査方法を見直すよう要望。厚労省は18年1月から方法を変更している。ただ、首相は「私から勤労統計について指示をしたことは全くない」と強調した。

 また野党は13日の合同ヒアリングで、18年1月から調査対象になる「労働者」の定義が変わり、一部の有期雇用労働者が臨時労働者のカテゴリーに変更されたと指摘。「日雇い労働者」を対象から外したため、その後の賃金が上ぶれしたのではないかと疑問視した。厚労省の担当者は「(日雇いを対象に入れると)一般的には全体の平均を下げると思う」と認めた。

 自民党の森山裕、立憲民主党の辻元清美両国対委員長は、統計に関する衆院予算委の集中審議を18日に開くことで合意。同省の統計責任者から更迭された大西康之・前政策統括官の前任者、酒光一章氏(昨年7月退職)を参考人招致する。【松倉佑輔、神足俊輔、小田中大】

毎日新聞
2019年2月13日 22時23分https://mainichi.jp/articles/20190213/k00/00m/010/264000c