厚労省「毎月勤労統計」の不正調査に続き、GDPのかさ上げ疑惑も浮上し、統計への信頼がガタガタになっている。安倍首相は、毎勤の問題を「セーフティーネットへの信頼を損なう事態を招いたことについておわび申し上げる」と矮小化に懸命。このままでは国が滅びかねないが、ソ連崩壊に大きなヒントがあった。

 1党独裁の下、ソ連政府は経済統計を改ざんしまくり、「経済はうまくいっている」「米国を超えた」などの喧伝を繰り返した。

 同時に、ソ連は統計についての自由な研究を封じていた。1985年にトップに就いたゴルバチョフ書記長(写真)のグラスノスチ(情報公開)で、ようやく研究が許されるようになり、統計の正体が暴かれるようになった。

 87年、ジャーナリストのセリューニンと経済学者のハーニンが衝撃の論文を披露した。〈別表〉の通り、両氏が推計した国民所得の成長率は、ソ連の公式統計とこんなに違っていたのだ。

「もう時すでに遅しでした。セリューニン・ハーニン論文の4年後、ソ連は崩壊したのです。ソ連国民もうすうす、当局の発表の嘘を知っていた。国がやっているのだから、自分たちもごまかしても構わないとなっていた。企業や団体までデータの改ざんが蔓延していたのです。こうなると、もう何が真実か、誰も分からなくなった。当然、有効な経済政策は打てない。経済が行き詰まったのも必然なのです」(経済誌記者)

 今の日本も、安倍1強の下、政府が平気で嘘をつく。さらに、神戸製鋼所やスバルなどのメーカーから、スルガ銀や商工中金など金融機関に至るまで、民間企業にも幅広く不正が蔓延している。先週もレオパレス21の手抜き施工が発覚した。

 東京商工リサーチの「不適切な会計・経理の開示企業」の調査では、2008年が25社だったが、16年は過去最多の57社と9年間で2.2倍に増え、昨年は2番目に多い54社と高水準だった。

「長年の1強、官民に蔓延する改ざんに加え、統計研究が遅れていることも含めて、ソ連に状況が酷似しています。せっかく『毎勤』の不正調査で統計の問題が顕在化したのだから、この際、すべてウミを出し切るべきでしょう」(前出の経済誌記者)

 ウミ出しは、安倍政権では無理。政権交代でメスを入れるしかなさそうだ。

日刊ゲンダイ
2019/02/13
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/247346/
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