「北方領土」を口にしない安倍首相、ロシアの優位あらわ

解説 専門記者・藤田直央

 平和条約締結交渉の行方が注目された、安倍晋三首相とプーチン大統領との25回目の日ロ首脳会談。終了後にあった日本時間23日未明の共同記者発表は、まず経済関係の発展をと訴えるプーチン氏のペースだった。安倍首相がにらむ6月末、大阪での主要20カ国・地域(G20)首脳会議の際の次の首脳会談での決着には、暗雲が漂う。

「相互に受け入れ可能な解決策を目指す」。モスクワ・クレムリンでの共同記者発表で、北方領土問題の決着が前提となる平和条約締結について両首脳は言葉をそろえた。だが、戦後70年以上も北方領土を実効支配するロシアの優位が、双方の発言に露骨に現れた。

 ホストとして先に発言したプーチン氏は、平和条約締結には「全面的な関係の発展が必要」と強調。その肝として「経済、貿易で日ロ関係は順調に発展しつつある」と述べた上で、「今後数年間で1・5倍、300億ドルの貿易高を目指そうと合意した」と語った。

 一方の安倍首相。最近の文化や…

朝日新聞
2019年1月23日6時54分
https://www.asahi.com/articles/ASM1R050NM1QUTFK026.html