「安倍総理が今日の世界の首脳の中で、また日本の憲政史上においても、トップクラスのリーダーシップを発揮されているのは、紛れもない事実です」――。衆院本会議場に歯の浮くような、おべっかが響き渡った。

 29日、安倍首相の所信表明への自民党の代表質問者に「抜擢」された稲田朋美筆頭副幹事長。質問とは名ばかりで、アベ様礼賛のネトウヨ演説に終始し、野党はもちろん、自民党内からもブーイングだ。

 稲田氏にとって南スーダンPKO日報隠蔽問題などで防衛相を引責辞任後、1年3カ月ぶりの表舞台である。冒頭で「わが党は失敗しても、何回でもやり直せる社会を目指してきた」と、自らの「復権」をさりげなくアピール。「安倍内閣は着実に外交成果を上げ、国際会議の場では、安倍総理と話そうとする各国首脳が列をつくる状況も見られ」などとフェイクニュース同然のアベ様ヨイショを連発し、本会議場をザワつかせた。

「党内でも安倍総理の『えこひいき』が過ぎるとの声が聞こえてきます」とは、ある自民ベテラン議員だ。こう続けた。

「普通なら岸田政調会長が質問すべきなのに、なぜ稲田氏なのか。幹事長の部下だけでも代行、衆院2人、参院1人の代理がおり、筆頭副幹事長はその次。序列で言えば5番目ですよ。いくら総理に見いだされた秘蔵っ子とはいえ、あからさまな“お友だち”の抜擢は、総理周辺の思い上がりの反映です」

 党内の冷ややかな声も稲田氏には馬耳東風だ。韓国の国際観艦式での海上自衛隊の「旭日旗」掲揚の自粛要請や韓国国会議員団の竹島上陸、徴用工訴訟などをあげつらって、“嫌韓”をあおるネトウヨ思考をムキ出し。

「わが国を取り巻く安全保障環境は急速に厳しさを増している。米国と、中国をはじめとする新興国のパワーバランスの変化が加速している」とし、「今こそ自分の国は自分で守る気概を持つべき」と勇ましかったが、日朝会談実現や日中関係改善など“アベ様”の意向を無視していないか。

それでも自衛隊明記の9条改憲案について、稲田氏が「自衛隊を誰からも憲法違反だとは言わせない。そのためにも改憲は急務だ」とエールを送ると、安倍首相は「(違憲とする)状況に終止符を打ち、全ての自衛隊員が強い誇りを持って任務を全うできる環境を整えることが、今を生きる政治家の責任」と応じる“相思相愛”ぶり。一般質疑の削減よりも、こんな連携プレーじみたヤラセ質問に貴重な時間を浪費する“国会破壊行為”こそ改めた方がいい。

日刊ゲンダイ
2018/10/30 15:00
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