シリアで武装勢力に拘束され、約3年4カ月ぶりに解放されたジャーナリストの安田純平さん(44)が25日に帰国し、家族と再会した。

 そんな中で「渡部陽一さん、戦場の掟」と題された以下のような文章がツイッターを中心に出回った。この中の「捕まるやつはその時点でジャーナリスト失格」という一文を引用し、「これは正論」「安田純平氏に唱えさせたい」「(渡部さんと)比べること自体おこがましい」などと渡部さんを賞賛し、安田さんを非難する声がネット上で次々上がった。
戦場カメラマンの渡部陽一さん(2015年撮影)

1、最前線行く時は世界最強の軍隊の自走砲部隊と行動する

2、ゲリラが蔓延る地域には近づかない

3、戦場が流動的なところには行かない

4、国外の難民キャンプとかを中心に取材する

5、護衛がいても危ない所には近づかない

6、国境地域から一歩も紛争国の中には基本的に入らない

7、捕まるやつはその時点でジャーナリスト失格

8、ボディガードはその地域最強の奴を大金で雇う

 「戦場の掟」は一時、2万4千回以上リツイートされ、これを根拠に毎度おなじみの「自己責任論」に発展。しかし、この「掟」は丸ごとデマだ。所属事務所が「全くの創作」と明確に否定した。

 25日夜にハフポストが報じた後、「戦場の掟」をツイートしたアカウントには手のひらを返したように批判が殺到。同アカウントはツイートを削除するとともに、26日に「間違いなくデマです」と認めた。渡部さんの動画とともに「戦場の掟」が紹介されている2015年ごろのページをネット上で見つけ、内容を確認せずに信じ込んでツイートしたという。一方で、謝罪は「誤った情報の拡散」のみにとどめると強調し「(渡部さんの)取材理念に合致している部分もある」と釈明した。

 所属事務所の担当者は「渡部は、『失格』などと人のことを批判するようなことはしない性格。ツイートはフェイクで、本人も『僕はこんなこと言っていません』と否定している」と話した。渡部さん本人の戦場取材のポリシーは「生きて帰り、伝えること」だ。「ツイートのような意味でとられるような発言すらしたことはない」という。また「戦場の掟」は以前からネット上に出回っていたデマだったが、ここまで爆発的に拡散されたことはなく、メディアからの問い合わせがあったのもこれが初めて。

共同通信
2018/10/26 14:26
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