「すべての自衛隊員が誇りを持って任務を全うできる環境を整えることは、今を生きる政治家の責任だ」――。14日、自衛隊の観閲式でこう言った安倍首相。憲法改正という名の「壊憲」に改めて意欲を示したのだが、演説内容はハッキリ言って支離滅裂だった。

 そもそも、安倍首相は観閲式で「今や国民の9割が、敬意を持って自衛隊を認めている」と強調していた。現状認識で「国民の9割」が自衛隊に敬意を持っているというのであれば、改憲する必要は全くないではないか。自衛隊員だって十分、今のままで「誇り」を持って任務に当たっているだろう。にもかかわらず、なぜ「環境を整える」ために改憲する必要があるのか。まったくワケが分からない。

 そんなパラノイア状態の安倍首相は、今回の内閣改造で改憲を訴える右派思想の「日本会議」のメンバーを9人も入閣させたが、さらなるウルトラ右翼を衆院憲法審査会の与党筆頭幹事に送り込む。新藤義孝元総務相だ。

 この男の右寄りのオツムは群を抜いている。

 2012年5月に開かれた「創生『日本』東京研修会」。安倍首相のほか、稲田朋美筆頭副幹事長や下村博文元文科相ら“アベ友”がズラリ並ぶ中で、長勢甚遠元法相は「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」という平和憲法の根幹を批判し、「この3つをなくさないと本当の自主憲法にならない」と発言。この研修会で登壇した新藤氏も「自民党の基本は『家族』」「尖閣を有人利用しよう!」などと言っていたから、頭がクラクラする。こんな男が憲法審の与党筆頭幹事なんて、常識的に考えてあり得ない人選だ。

 政治評論家の本澤二郎氏がこう言う。

「PKO法成立の前後、自衛隊員を子息に持つ与党支持者から政府に対して、『子どもを戦場に行かせないでくれ』との陳情が殺到したといいます。安倍政権は、その事実を無視して『自衛隊の誇り』を叫び、壊憲に突き進んでいる。自公連携が崩れた沖縄県知事選の敗北で、もはや改憲は“幻”ということに、なぜ気付かないのか」

 ウルトラ右翼をそろえれば何とかなると思っているのであれば大間違いだ。

日刊ゲンダイ
2018/10/15 15:00
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