■「激しい批判をする野党の後ろにも国民はいる」。総裁選出馬を決めた石破茂が語る国会・憲法・沖縄

 9月7日告示・20日投開票の日程で行われる自由民主党の総裁選挙は、野田聖子氏の出馬断念により、安倍晋三氏と石破茂氏の一騎打ちとなった。

 政党の代表を選ぶ選挙とはいえ、自民党の総裁選となれば、事実上「次の総理」を選ぶ選挙だ。とりわけ、今回の総裁選は、現職の安倍総裁が「次の国会」に党としての憲法改正案を提示したいとの意気込みを示していることもあり、見逃せない。

 しかし、すでに安倍陣営の圧勝が伝えられていることもあり、今回の総裁選は今ひとつ盛り上がりに欠けるのも事実。新聞もテレビもかつての総裁選のように大々的に取り扱うことをしない。ここまでワンサイドゲームとなると仕方のないことかもしれないが、ワンサイドゲームであるということは、挑戦者側―つまり、石破茂氏側―には、それ相当の覚悟があるはずである。

 その覚悟のほどが知りたい――。

 その一心で、総裁選挙に立候補した石破茂氏にインタビューを打診した。
 石破氏サイドはこころよく取材要請に応じてくれたが、なにせ選挙戦を控えた忙しい最中、許された時間は極めて短いものとなった。

 今回のインタビューでは、時間の都合もあり、10%への消費増税や社会保障改革など政策面での質問をあえて行わなかった。そうした質問は全国紙やキー局など、メジャーなメディアがその社会的責務の一環として対応するだろうという判断があったからだ。

自民党の総裁選管理委員会は今回の総裁選でも報道各社に「公平・公正な報道」を要請している。(参照:自民の総裁選「公平・公正な報道」要求、専門家から懸念/朝日新聞

 報道各社がこの要請を忠実に遵守するのであれば、例えば9月4日の朝刊トップ記事として安倍晋三インタビューを配した日経新聞などが、後日、石破茂氏へのインタビューも、安倍総裁インタビューに費消したのと全く同じ紙幅を割いて伝えるだろう。

 政策面の質問はそれら大手メディアに譲ることとし、今回のインタビューでは、かつての総裁選の経緯、憲法9条改正案、沖縄、そしてキャンディーズについてなどなど、メジャーなメディアが等閑視するであろう質問ばかりをあえて選んでみた。
(聞き手:菅野完)

■平和安全法制の頃から抱いていた違和感

――結果として安倍さんと石破さんのお二人だけになってしまいましたね。

石破茂氏(以下、石破):そうなっちゃいましたね。

――結果としてこのお二人になったことでとても面白い対比が生まれたなと思います。石破さんの初当選は1987(昭和61)年の第38回総選挙。つまり昭和最後の衆議院選挙で初当選でされています。一方の安倍さんの初当選は1993(平成5)年の第40回総選挙。平成2回目の衆院選でした。昭和最後の中選挙区選挙を知る政治家が、平成の申し子・小選挙区の申し子のような安倍さんと、平成最後の総裁選で一騎打ちになるという対比は極めて興味深いなとおもいます。そこでお伺いします。中選挙区制度時代よりは重責ではなくなったとはいえ、いまでも党の幹事長は極めて重要な役職です。石破さんは、野党時代を含め安倍政権を幹事長という立場でもご覧になられました。そのときにご覧になられた安倍政権の姿は、それまでの石破さんがご覧になられていた自民党とはだいぶ違ったものだったのでしょうか?

石破:幹事長時代には違和感はなかったですね。

――なかったですか。

石破:それは本当になかったです。まずは政権奪取すると。6年前、安倍先生と私が総裁選を戦ったとき、安倍先生は国会議員票の決選投票で圧倒的に勝たれて、地方票では私が多かったですから、地方からあれこれご批判はあったけども、もうそこは安倍石破体制なのだ、自民党はまず政権を奪還するために全身全霊でやろうと。ですから選挙の体制、あるいは党の運営、政策、9月に総裁選があって、政権奪還選挙が12月でしたから、10、11、12の3か月間、本当に全力でやりました。選挙も全力でやりました。幹事長として2年、それで政権奪還したあとの参議院選挙では、岩手と沖縄以外は全部勝って……ということで、選挙も、党のあり方も、政策も、全身全霊でやったので、幹事長時代にはまさに一体となってお支えしてきたつもりです。



つづく

ハーバービジネスオンライン
2018.09.08
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