■自民党総裁選 石破茂氏に保育園問題を直撃「総理になったらやります」の真意とは?

自民党総裁選が7日告示され、3選を目指す総裁の安倍晋三首相(63)と、石破茂・元党幹事長が立候補を届け出た。20日の投開票に向け、一騎打ちの戦いが繰り広げられる。


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小林:安倍政権では「女性活躍」「待機児童解消」が目玉政策となりました。石破さんの女性政策にキャッチフレーズはありますか?

石破:「女性に“本当にこの国に生まれてよかった”と思ってもらえる社会を作る」ということ。政治は手品でも魔法でもないからいっぺんに解決できませんが、「政治が私たちのこと分かってくれる」と思ってもらえるようにしたい。何かに困っている女性が、「政治が私たちの味方になってくれる。政治家が、少なくとも、私たちの話をちゃんと聞いてくれる」と実感してもらえるようにしたい。

小林:女性の半数以上が非正規雇用という状況が続いています。妊娠すると雇い止めに遭うようなマタハラも多発している。妊娠、出産、育児、介護などのライフイベントにより、いやおうなく女性が仕事を辞めざるを得ない現状があります。

石破:女性の率直な意見がきちんと政策に反映される仕組みが必要です。どうしても男性には限界がある。政策立案の場にもっと女性を登用しなければいけません。

小林:育児介護休業法が改正され2017年1月からは、非正規雇用の法適用の要件が緩和され、労働契約が続くかどうかあいまいでも育休が取得できるようになりました。にもかかわらず、非正規雇用では事実上、育児休業が取得できない状況は変わっていません。おおよその育休取得者数を知るには、育児休業給付金の初回受給者数をみるのですが、直近でも年間に約30万人が育休を取るなかで、うち期間の定めのある労働者はわずか1万人程度しかいません。

石破:非正規労働者がどうしたら育休が取れるのかという議論をしているうちに、時間だけが過ぎていく。それは許されないことです。私が総理になったら、「非正規労働者が望めば全員が育休を取得できる法律を作る」と宣言します。政府が言い切ることで、それは叶う。女性が自分の能力をめいっぱい発揮できる社会を作らなければ、この国は、たちゆかなくなります。これは、待ったなしの問題です。

 労働力人口が減るなかで、「女性の活躍」と「出生率の上昇」の二つを両立させる。これは大きな課題ですが、都道府県別に見ていくと、子育てしながらの女性就業率が高い地域もあります。そうした自治体の施策を参考にして全国で普遍化して実現していきたい。

小林:女性が働きながら子育てをするには、保育政策がますます重要です。安倍政権の待機児童対策で2013年4月に「待機児童解消加速化プラン」が策定され、17年度末までに50万人分の保育の受け皿を確保すると表明するなど、急ピッチで保育所が作られた。一方で、たしかに保育施設は増えましたが、保育士不足に陥ってしまい、肝心の人材育成が追い付いていません。人手不足、経験不足で保育士に余裕がなくなり、保育士が子どもに暴言を吐く、思う通りにいかないと子どもにきつく当たるなど、保育の質の低下も問題になっています。

石破:一部に「質」より「量」が大事だという主張があり、急ピッチで保育所が作られています。だから、小林さんが著書などを通して指摘するような質の低下を招いてします。「せんせい、やさしくない」という思いを子どもたちにさせることがあってはなりません。子どもがそう思わなくてすむような環境を作ることは政治の義務です。実際に親や保育士が何を望み、何を悩んでいるのか。もっと目を向けたい。

 過酷な労働を強いられるのでは、保育士によっては、子どもたちへの愛情をどこかに置き忘れてしまうこともあるでしょう。仕事に見合う賃金水準でなければ、保育士を辞めて他の職業に流れてしまっても仕方のないこと。フルタイムで働く保育士の処遇をあげることは、理屈抜きで行います。

 保育所には児童虐待から子どもを救う役割もある。そうした意味でも子どもが頼りにできるところのひとつが保育所である。しかしながら、保育所で虐待が行われてしまうのでは本末転倒で、保育士の処遇をあげることは必要不可欠です。

つづく

AERA.dot
2018/9/7 14:31
https://dot.asahi.com/dot/2018090700050.html