自民党総裁選の7日告示に向け、3日に合同選対本部が発足した安倍首相陣営だが、選挙後を見越した“論功行賞合戦”で選対の中はドロドロだ。その中心は安倍の出身である総裁派閥の細田派。特に安倍側近の3人が「がん」だという。

「安倍選対は本当に異様な空気。自分が、自分がと前面に出るばかりで辟易する」

 こう話す自民党のベテラン議員が“問題人物”だと名指しするのは、下村博文元文科相、西村康稔官房副長官、萩生田光一幹事長代行の3人だ。いずれも細田派に所属。下村は細田派事務総長、萩生田は合同選対の事務局長、西村は官邸直結と、それぞれが自身の立場を強調し、我先にと選対を仕切ろうとしたり、他派閥に指示を出したり、醜い主導権争いを演じている。3日に都内で行われた選対発足式の準備でも、「司会を誰にするか」「ガンバローコールは誰がやるか」などで揉めたという。

 3人はそれぞれが安倍側近を自任。圧勝に向けて、「自分はこんなに働いています」「動きの鈍い派閥には私が指導しました」などと安倍に売り込んでいるのだろうという見方が党内ではもっぱらだ。

■投票日まで足の引っ張り合いか

 手柄アピールの先に見据えるのは、総裁選後のポストである。閣僚経験のある下村は幹事長か官房長官狙い、西村と萩生田は初入閣を熱望しているらしい。

「安倍陣営には総裁派閥の細田派を含め、麻生派、二階派、岸田派、石原派の5派閥と竹下派の一部がいる。本来、総裁派閥は謙虚な態度で裏方に徹して、他の派閥をヤル気にさせる役割です。それなのに、他派閥に汗をかかせて、自分たちで手柄を取ろうとする。やることが逆でしょう」(別のベテラン議員)

 総裁選後の人事を巡っては、二階幹事長が留任前提で動いているとか、合同選対の事務総長に就いた甘利明元経済再生相が、大臣室での“裏金”スキャンダルからの復権を目指して、党三役か再入閣を希望している、などという噂も飛んでいる。猟官運動はグロテスク極まりない。

「この5年間の安倍人事を見れば“お友達”以外は登用されていない。安倍側近たちが『次は自分だ』と浮かれているのを、はたから見ればドン引きなのは当然です。国会議員はこぞって安倍首相支持に流れましたが、大臣と党幹部のポスト数には限りがあるので、全員には回ってきません。安倍陣営の面々は早くそれに気づいた方がいい」(ジャーナリスト・角谷浩一氏)

 20日の投票日まで、足の引っ張り合いが続くのか。

日刊ゲンダイ
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