■寂れた商業ビルと、政界の名門鳩山一族とのつながり

秋田は「森と木の国」だという。秋田空港から秋田市街まで延びる自動車専用道では、北欧で見るような針葉樹林が車窓いっぱいに広がっていた。
 県内が金足農業高校の快挙に沸くおよそ2カ月前、特別取材班は鳩山二郎衆院議員の秘書で、宝石の架空売買や金塊密輸疑惑のある小澤洋介氏の「後ろ盾」とされる人物の足跡を追って、秋田を訪れていた。

 JR秋田駅で車に乗り換えて15分ほど、市立秋田総合病院から県道56号線まで続く市道沿いには、ありふれた住宅地が広がっている。市道のちょうど中央にあたる付近に、3階建の古い商業ビルが建っている。最上階の窓からは敷布団とおぼしきものが干されているそのビルの名は「GARDENビル」。玄関を入ると、正面には上階へつなぐ階段があり、左には暗い店内がうかがえる開けっ放しのドア。どこからか歌謡曲の音が漏れ聴こえる玄関フロアの壁には、地元サッカーチームのポスターが寂しげに貼ってあった。

開けっ放しのドア脇にかかる看板には、「くにお」の文字がでかでかと大書されている。寂れた商業ビルを特別な存在にしているのは、この3文字の存在といえるだろう。鳩山二郎氏の父親で、総務大臣まで務めた鳩山邦夫氏(2016年没)が、自身の名前を使うことを許可した店なのだ。

ビルの正面にまわると、5枚の看板が目を引く。上から順に、「衆議院議員鳩山二郎 新声会東北事務局」「合同会社新声」「焼肉くにお」「ステーキくにお」「ステーキラウンジくにお」。新声会とは故・鳩山邦夫氏の資金管理団体の名前であり、いまは次男の鳩山二郎衆院議員が同名の政治団体を設立している。

 邦夫氏は東京生まれで、地盤は邦夫氏の母親のルーツ(ブリヂストン)である久留米を中心とした福岡6区だ。秋田とは縁のないはずの鳩山家がなぜ、秋田に資金管理団体の事務局を置いているのか。奇妙なのは、2016年には秋田市内のホテルで開いた政治資金パーティーで約1,245万円を集めており、縁もゆかりもない土地にしては「異常」とも思える集金力を見せつけていることだ。これらの資金の出所はどこなのか。

 新声会東北事務局の代表を務めるのは、丹羽志郎氏。小澤秘書と親しく、「6代目山口組組長の兄弟分」を自称する人物だ。齢70を越すものの、押し出しは強く、笑いながら話していたかと思えば、次の瞬間には憤怒の表情で激高する。感情を自在にコントロールするのはヤクザ者特有ともいえる癖(へき)だが、この丹羽氏は一筋縄ではいかない経歴の持ち主だ。

つづく

Net IB NEWS
2018年08月24日 07:07
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