「今よりも4割程度下げる余地がある」――。何やら怪しい思惑が透けて見える。21日、札幌市で開かれた講演で、菅官房長官が携帯電話料金の引き下げについて言及した件。「なかなかイイことを言うじゃないか」と喜んでいると、後で手痛いしっぺ返しを食らうことになる。

「この携帯電話の料金があまりにも不透明で、そして他の国と比較すると、高すぎるのではないか」「事業で過度な利益を上げるものではなく、利益を利用者に還元しながら広げていくものだ」

 菅長官は講演でこう踏み込んでいたが、2018年版の「情報通信白書」によると、1世帯当たりの移動電話通信料は年間約10万円だから、4割安くなれば4万円が浮く。ネット上では「ええぞ!もっと言うたれ!」「ガンバレ!」と歓迎する声が飛び交っているが、菅長官はなぜ、突然、携帯電話料金を取り上げたのか。

「来年10月の消費税2%アップが背景にあるのでしょう。消費が上向かない中、増税するばかりでは国民の反発は必至です。そこで、23日に総務省の情報通信審議会で携帯料金引き下げの議論が予定されているタイミングで携帯電話料金を取り上げ、国民にアピールしたかったに違いない。ただ下げられるといっても具体性に欠けるため、4割という数字を挙げたのでしょう」(総務省関係者)

 つまり、増税強行から国民の目をゴマかすための発言だったわけだ。

 しかし、この発言にはまだ問題がある。政権が民間企業の料金体系に「介入」したことだ。政府の電波政策に詳しい醍醐聰東大名誉教授がこう言う。

「料金の値下げは本来、民間会社が自主的に経営判断することです。公共の電波を使う通信分野は、国も一定関与しますが、管轄する総務省の頭ごしに、官邸が『4割』という具体的な数値まで示して値下げに言及するのは越権行為です。安倍政権は、自主的な値下げではなく、官邸の意向に対して、業界が動くという形にしたいのでしょう」

 安倍政権の下では、民間の自立性がどんどん奪われていく。

日刊ゲンダイ
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