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 9月20日に投開票が行われる自民党総裁選に、石破茂元自民党幹事長が8月10日にいち早く名乗りを上げた。野田聖子総務相も出馬意欲を見せるものの、一連の“仮想通貨疑惑”で身動きがとれないうえ、立候補に必要な20名の推薦人を集める見通しもついていない。

■首相は「余裕」

 一方で、すっかり余裕を見せているのが安倍晋三首相だ。8月15日には戦没者追悼式などに出席した後、同日夜には森喜朗元首相や小泉純一郎元首相、麻生太郎財務相らと軽井沢で会食し、翌朝にはゴルフを楽しんだ。

 もっとも当初、安倍首相は8月11日に亡父・晋太郎氏のお墓参りをすませた後、山口県連の会合で出馬表明することになっていた。その予定を遅らせたのは、西日本の豪雨被災対策を優先したためというのが建前だが、その実は早期に出馬表明することで論戦上手な石破氏とがっぷり四つで組む状況を避けたかった、との思惑も見え隠れする。

 実際に気象庁が異例にも東京と大阪で会見を行った7月5日の夜、安倍首相は“赤坂自民亭”で自民党議員たちと談笑している。この会合への異例な参加は総裁選での感触を得るためと言われた。さらに福岡県、佐賀県、長崎県、広島県、岡山県、鳥取県、兵庫県、京都府に特別大雨警報が出た6日夜にも、安倍首相は官邸で無派閥議員たちと面会。総裁選対策は着々と行われており、決して優先順位を下げているわけではない。

 そのような安倍首相に挑戦状をたたきつけるがごとく、石破氏が開いたのが8月17日午後の「政策会見」だった。まずは得意の憲法論を展開し、秋に開かれる臨時国会で憲法改正発議に意欲を示す安倍首相に論争を挑もうというわけだ。

 しかしながら17日の会見では記者からの質問は相次いだものの、8月10日の出馬会見ほど注目を集めることはなかった。安倍首相の3選が確実視されている以上、当選することのない石破氏の動向を報道する価値はあまりないということもあるだろう。ニコニコ動画やTHE PAGEといったネット動画配信メディアが17日の会見に参加しなかったことも、露出度が低くなった理由だ。

 そればかりではない。筆者が気になるのは、普段は人一倍丁寧に語る石破氏の「言葉の薄さ」である。

 「私はどんな媒体の取材でも受ける」。10日の会見でも17日の会見でも、石破氏は大手メディアに限らずフリーランスの取材をも歓迎すると断言した。17日の会見では表現の自由に関し、「国政上の説明義務」を規定する自民党案について言及している。その背景には森友・加計問題があることは間違いないが、同時にネットや雑誌など記者クラブ以外のメディアに対するアピールも感じられた。

 石破氏と同じく党内基盤を持たない小泉純一郎元首相は、新聞やテレビよりも週刊誌やスポーツ紙などといったメディアとの距離が近かった。それが2001年4月の総裁選でのブームの火付け役になったと言われている。石破氏がそれを意識したとしても当然だ。

■自民党定例会見のドアを閉じたのは誰か

(略)

■自己都合で秋波を送られても…

 報道(メディア)は、政治家と有権者との間の情報の橋渡し役といえる。重要なのは等身大の事実を扱うことであり、時には政治家が渡したくない情報もその中に含まなくてはならない点だ。そういう意味では政治家とは常に“平常な関係”を貫くことが必要だが、「間に合っているから」といって遠ざけられたり、「(瞬間風速的に)必要だから」といっていきなり引き寄せられるようなことは御免被りたいものだ。
 
そうした観点で今回の自民党総裁選を見るなら、劣勢ゆえに必死なのだろうが、フリーランスにも秋波をおくろうとしている石破氏に対しては自然と距離を置いてしてしまう記者が多いのではないだろうか。

 そのように感じるのは筆者だけではないようだ。周辺の記者の様子をみる限り、今回、盛り上がりに欠ける理由の一つは、石破氏に対するそこはかとない不信感があるように感じられる。