https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180703-00000031-sasahi-pol

 加計学園理事長が先日行った記者会見について、ジャーナリストの田原総一朗氏が矛盾点を指摘する。

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 重い責任のある人物たちが堂々と嘘を言い、それがまかり通っている。なぜ、日本はこんな国になってしまったのか。

 たとえば、6月19日に加計学園の加計孝太郎理事長が記者会見を開いて、“2015年2月25日に、私と安倍首相が面会したというのは嘘で、愛媛県や今治市を騙したのだ”と堂々と言ってのけた。もちろん国民も騙されたわけだ。難航していた獣医学部新設の動きを進めるためにやったのだというのである。しかも、それは事務局長が勝手にやったことで、自分は知らなかったのだという。

 しかし、19日の記者会見については、開くことも時間も、地元メディア以外は参加させないことも、すべて理事長が決めているのである。理事長が全権を握っているわけだ。

 そんな学園で、安倍首相に会っていないのに会ったという大嘘をついて、国民を騙すということを事務局長が勝手にやる、なんてことがあり得るのか。

 しかも、その大虚言を事務局長がいつ理事長に報告したのか。記者の質問に理事長は“覚えていない”と答えている。こんなことは、とても信じられない。記者たちは問うていないのだが、虚言の報告を受けて、理事長は何と反応したのか。よくやった、とほめたのか。それとも怒ったのか。怒ったのならば覚えているはずで、怒ったのではないのだろう。

 そして、この大虚言を安倍首相にはどのように報告したのか。そのことを記者が問うと、なんと、“連絡していない”と答えた。これで私は、理事長の言うことが信用できない、というよりも嘘に嘘を重ねている、と思わざるを得なくなった。

 加計理事長と安倍首相は、40年来の親友だということだ。それならば、安倍首相に迷惑がかかる嘘をついたということを、誰よりも早く安倍首相に報告すべきである。それをしなければ、安倍・加計の信頼関係は壊れてしまう。当然、安倍首相は怒るはずだ。だから、安倍首相に連絡していないと言ったことで、虚言そのものが嘘だ、と私は確信した。

 嘘に嘘を平気で重ねているのである。

 そして、加計理事長の記者会見について問われて、安倍首相は“コメントする立場にない”と答えた。これもまた、理解に苦しむ答弁である。

 話は変わるが、安倍首相の“私や妻が森友学園の認可や土地売却に関わっていたら、首相も議員も辞める”との国会での発言を受けるかたちで、財務省は決裁文書を改ざんした。しかも、朝日新聞の報道がなければ、財務省は隠蔽するつもりだったのである。改ざんというのは、事実を隠し、ねじまげるということだ。

 しかも、なぜ改ざんをしたのか、と記者に問われて、最高責任者である麻生財務相は“それがわかれば苦労しない。わからないから答えようがない”と言い、“個人がやったことで、そういうことはよくある。財務省に責任はない”と平気で答えている。堂々と嘘をつき、最高責任者が、何の責任もとらないのである。

 財務省の元局長も、経産省の元首相秘書官も、平気で嘘をついている。まるで嘘をつくのが常識になってしまったようだ。

 それでいて、朝日新聞をはじめ、どの新聞社の世論調査でも、安倍内閣の支持率は、何と上昇している。少なからぬ国民が安倍内閣を是認しているのである。これは一体どういうことなのか。私は困惑している。

※週刊朝日 2018年7月13日号