まったく、悪知恵だけは働く連中だ。政府・与党が会期の大幅延長を決めたウラには、9月の自民党総裁選を見据えた安倍官邸の姑息な思惑が見え隠れする。

 通常国会は32日間の延長で、7月22日まで開かれることになった。今国会では、安倍政権が重要法案と位置付ける働き方改革法案やIR関連法案、参院の議員定数「6増」のための公職選挙法改正案などが積み残しになっている。

 自民党の二階幹事長は会期延長の理由を「重要法案を確実に成立させるため」と説明したが、いつものように強行採決を連発すれば、2週間程度の延長で済む。1カ月もの大幅延長は、総裁選で安倍首相の3選を確実にするための工作だというのだ。

「働き方改革関連法やIR法案を成立させて、安倍首相の実績にするのはもちろん、定数を増やす参院選挙制度改革では参院自民党、とりわけ竹下派に恩を売ることができる。総裁選への協力を取りつけるためのバーターです。何より、国会が閉じたら総裁選への態度を表明すると言っている石破元幹事長や岸田政調会長、野田総務相らの動きを7月末まで封じられることが大きい。総裁選が短期決戦になれば、総理に有利に働くのは間違いありません。通常国会の閉幕時には総理会見を行うのが通例ですが、その場でいち早く出馬宣言をして、一気呵成に3選の流れをつくる計算です」(官邸関係者)

 すべてが安倍総理の3選に向けたお膳立てというわけだが、国会を1日開くには3億円の経費がかかるといわれる。安倍首相の総裁選対策で、90億円もの税金が浪費されるなんて冗談じゃないのだ。

■モリカケの新事実が出てくる可能性も

 だいたい、1カ月も延長するなら、刑事訴追の恐れがなくなった佐川前理財局長や昭恵夫人を証人喚問する時間もつくれるはずだ。腹心の友の加計理事長も、国会招致を「お待ちしている」と言っていたくらいだから、お呼びしたらどうなのか。

 20日夜に、安倍首相と銀座の高級ステーキ店で会食した河村衆院予算委員長は、安倍首相が「もう集中審議は勘弁してほしい」と漏らしたと明かした。河村は21日になって「(勘弁と言う)発言はなかった」と撤回したが、おそらくこれが安倍首相の本音なのだろう。

「安倍首相周辺は当初、モリカケ問題の追及を嫌がって、一日でも早く国会を閉じる方針だといわれていました。しかし、公明党や参院への配慮から、IR法案や定数増を通す必要があり、小幅延長は避けられなくなった。延長せざるを得ないなら、それを逆手に取って、自分にとって有利なように利用するつもりなのでしょう。安倍首相は7月11日から欧州などを外遊する予定も入っている。内閣不信任案が出された際に首相が不在だった場合はどうなるのかなど、官邸と与党が延長幅についてかなり綿密に相談した結果、1カ月の大幅延長になったようです」(政治ジャーナリスト・鈴木哲夫氏)

 しかし、安倍首相周辺が懸念していたように、延長国会でモリカケの新事実が出てくる可能性もある。大臣や与党議員の失言で逆風が吹き荒れるかもしれない。安倍官邸の思惑通りに見えても、一晩でガラリと状況が変わることもあり得る。延長国会は週明けから正常化する見込みだが、大幅延長は安倍首相にとってもろ刃の剣になりそうだ。

日刊ゲンダイ
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