https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180602-00010000-jindepth-pol

まとめ】

・自民党は防衛費について「必要かつ十分な予算を確保」すべきと提言。

・防衛費GDP2%論は無根拠。防衛費2倍増なら国民生活は破綻。

・中国との関係を改善するため、陸自予算・人員を半分にすべき。

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自民党は防衛費を倍化しろと主張している。5月25日づけブルームバーク「NATOの『GDP比2%』参考に防衛費確保を」では「安全保障調査会と国防部会はそう結論づけた」と報道している。その趣旨は「従来GDP比1%であった防衛費を2%まで増やせ」である。

だが、これは荒唐無稽な主張だ。対GDP比2%は無根拠である。また平時負担では不可能な金額である。選択肢としても非現実的である。

ではどうすればよいか?

本当に防衛費が2倍必要なら中国と仲良くしたほうがよい。日本は中国に下手に出て対立を緩和すべきだ。どうやっても勝てない敵なら味方にするしかない。

実際には従属の必要もない。防衛費の無駄を省けば対中対応は充分可能だ。陸上戦力を減らし海空戦力を増強すればよい。

■ GDPが半分に減れば防衛は充実するか?

(略)

■ 防衛費2%で国は滅びる

そもそも今の日本にはその余裕はない。

防衛費は約5兆円である。18年度予算で5.2兆円であり国債費と社会保障費を抜いた一般会計予算のうち1/8、13%を占めている。

2倍にすれば国民生活は破綻する。消費税を10%にしても足りない。消費税1%の税収効果は約2兆円でしかない。そして5%を8%に増やしただけでも空前の不景気となった。民力は疲弊の極にある。実質所得が下げ止まらない中、消費税10%以上に相当する負担増に国民は耐えられない。

到底、平時にできる選択ではない。今は戦時下ではない。強いて防衛費の負担増に耐えなければならない状態ではない。

それよりもやるべきことはいくらでもある。現状では安全保障よりも社会保障である。あるいは、今後の成長力確保を考慮すれば教育の充実、無償化等に費やすべきだ。

■ 中国と敵対できないなら味方になるしかない

(略)

■ 陸自を減らせば現状予算で対応可能

実際にはそこまでする必要もない。現状ある防衛費の無駄を省けば済む。

具体的には陸自予算・人員を半分にすればよい。なにより現状で陸自は何の役にも立っていない。対中対峙に関しては全く機能していない。それでいて海空自よりも多い予算を費消している。

その人員予算を半減させれば海空戦力は3割増にできる。中国との対峙に必要な軍艦も戦闘機も3割も増やせる。

それ以外の無駄も減らせる。海空自衛隊にも無駄がある。また平凡性能で高価格となるF−2戦闘機やC−2輸送機のような残念な国産武器開発をやめてもよい。他にも駐留軍経費の無駄や情報組織の無駄もある。

それらを省いても中国との対峙は充分である。中国も既に人口オーナスに入っている。今後は低成長に喘ぐことになる。日本の少子高齢化が山を超える2050年くらいまでなら陸自削減で凌げる。

将来的には日中関係も改善する。互いに少子高齢化といった社会・経済問題を抱えている。安全保障では相互に「敵対できないから味方にするしかない」と考える可能性は高い。

文谷数重(軍事専門誌ライター)