次々と新たな事実が明らかになるモリカケ問題。ジャーナリストの田原総一朗氏は、問われるべきは安倍首相の進退だが、自民党の沈黙姿勢に苦言を呈する。

*  *  *
 5月22日に新聞各紙が一斉に大きく報じた。2015年2月25日に安倍晋三首相が加計学園の加計孝太郎理事長と面会していた、という記録が愛媛県の文書にあったというのである。

 加計理事長が獣医学部の新設を目指していることを説明すると、安倍首相は「それはいい考えだ」と積極的に応じたという。さらに、実はその前に加計学園側が、当時官房副長官だった加藤勝信氏と会って、獣医学部の設置が「厳しい状況にある」と訴えているのである。加藤氏は記者会見でそのことを認めている。

 安倍首相が15年2月に加計理事長に会っていたとなると、すべてが極めてリアリティーを帯びてくる。

 5月10日の衆参両院の予算委員会では、参考人として国会に呼ばれた柳瀬唯夫元首相秘書官が、15年2月ごろから3回にわたって加計関係者と会っていたことがわかった。

 少なからぬ大学が獣医学部の新設を政府に申請している中で、加計関係者とだけ、しかも3回も会うというのは、どう考えてもえこひいきであり、表沙汰になれば、あきらかに問題になる。

 しかも柳瀬氏は、首相から一切指示も受けていないし、報告もしていないというのである。

 首相秘書官がえこひいきを手前勝手にやる、などということがありえるのか。そんなことをすれば、上司である首相から怒られるはずである。私は柳瀬氏を経済産業省の課長時代からよく知っているが、そんな手前勝手なことをする人物ではない。

 国民のほとんどが、柳瀬氏は虚言を続けているのだろうと強く感じているはずだが、柳瀬氏はなぜ虚言を続けなければならなかったのか。

 安倍首相が15年2月25日に加計理事長と会い、加計の思惑に積極的に対応していたとなると、柳瀬氏の行動がすべて納得できる。柳瀬氏は安倍首相の強い指示を受けて、加計の目論見を実現させるために頑張っていたわけだ。それではなぜ安倍首相の指示もなく、報告もしなかったと虚言を続けたのか。

それは安倍首相を守るためである。

 安倍首相は国会で、17年1月20日、つまり加計の獣医学部問題がすべて落着するまで、「何も知らなかった」と言い切っていて、もしも柳瀬氏が「指示あり」「報告した」などと言うと、安倍首相のウソがバレて、首相の座が危うくなるからである。

 だが、15年2月25日に加計理事長と会っていたとなると、安倍首相の国会での発言はウソだということになる。当然ながら、安倍首相は加計理事長と会っていたことを否定した。だが、国民の多くは安倍発言を信用していない。

 さらに、森友問題でも大変な事実が露呈した。安倍昭恵氏と問題の国有地の関わりが文書に記されていたことがわかった。こうなると、基本的には安倍首相はアウトである。

 だが、現在の野党には安倍首相を辞めさせる力はない。そして、自民党内にも今度の問題で安倍首相の責任を問うという声は起きていない。いってみれば、自民党議員のほとんどが安倍首相のイエスマンになっているのである。それに、5月21日発表の朝日新聞の世論調査では、安倍内閣の支持率は前回より5ポイント増の36%で、読売新聞では3ポイント増の42%と、いずれも増えている。安倍首相はこうした中で、強引な突破を図るだろう。国民の一人として、それをどう捉えればいいのか。

※週刊朝日  2018年6月8日号
https://dot.asahi.com/wa/2018052900038.html?page=1