河野太郎外相(55)が中東外交に注力している。
北朝鮮情勢をめぐる外交案件が山積する中、間隙を縫うように、4月27日から5月1日にヨルダンを訪問した。
かつて中東は「世界外交の『銀座4丁目』であり、外交の総合力が値踏みされる」(麻生太郎副総理兼財務相)といわれながら、
日本外交の中心ではなかった。
だが、河野氏は昨年8月の外相就任後、中東訪問はすでに4回を数え、歴代外相の中で訪問件数もペースも突出して多い。
河野氏が中東への関与を強めるワケとは−。

河野氏の中東傾斜のきっかけは、父・河野洋平元衆院議員(81)の影響が少なくない。
洋平氏が外相だった平成12(2000)年、日本はサウジアラビアとの関係が悪化し、石油採掘の利権を失効した。
当時衆院議員初当選から4年目の新人議員だった河野氏は、サウジ側との厳しい交渉で苦労する父親の姿を見て「
人と人との信頼関係こそが外交の礎」との思いを強くした。

 米ジョージタウン大の同窓生にヨルダン国王ら独自の中東人脈を持つことも河野氏の強みだ。
外務省によれば、昨年8月4日、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子が河野氏の外相就任直後に電話で祝意を伝えたことは、
中東諸国に対し強いインパクトを与えたという。

「日本だからこそできる形で、中東の安定にもっと貢献できる。これは私の信念だ」。
河野氏は昨年12月、バーレーンで開かれた中東の安全保障関連会議でこう演説した。
河野氏が中東外交を重視するのは、日本だからこそ中東和平に貢献できるという確信があるためだ。

 日本人は神道や仏教を信仰する人が多く、同時に無宗教の人も多い。キリスト教とユダヤ教、イスラム教のそれぞれの誕生と歴史を背景に
、欧米諸国の介入や部族間の紛争が絶えない中東諸国とは、歴史的にも宗教的にも中立的な立場を維持してきた。

 中東和平の実現は米国の関与が不可欠だが、トランプ氏は台頭する中国や厳しさを増す北朝鮮情勢を踏まえ、
中東よりもアジア重視の姿勢を打ち出している。シリア情勢をめぐる米露対立など、中東和平は停滞を余儀なくされている。
米国はシェールガス革命で今後10年程度でエネルギーの純輸出国に転じるといわれ、中東への関与の必要性はさらに薄れる可能性がある。

河野氏は、今の日本の立場を「強み」と捉え、資源外交一辺倒の従来のアプローチから転換し、
中東の安全保障に積極的に関わることで米国と中東諸国の橋渡し役を果たしたい考えだ。
石油やガスの多くを依然、中東に依存する日本の国益につなげる戦略でもある。

 ただ、河野氏の姿勢に対し「軍事力を持たない日本が影響力を発揮するのは難しい」(外交筋)といった懐疑的な見方は根強い。
ある中東専門家は「日本として中東に関与し続けるのであれば、河野氏1人の訪問や発信だけに頼らず
、国内に中東支援の枠組みを作る必要がある」と摘する。

 経済支援にとどまらず、治安や人材、教育支援など地道で息の長い取り組みを通じて日本の存在感を高められるか。
日本の歴代外相と違い、複雑な事情が絡み合う中東に正面から向き合う「河野外交」の真価はこれからだろう。
中東情勢の局面打開に日本が積極的に貢献していく姿を今後も注目していきたい。 (政治部 小川真由美)

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