「申し訳ございません。もう満員札止めでございます。4時から並んだ方も大勢いらっしゃって、578人しか入れないもので……。用意したお詫びの紙もなくなっちゃって……」

 まだ開場前、しかも雨だというのに、東京・杉並区の「セシオン杉並」には多くの人だかり。前売り券はなく先着順のため、“札止め”と言っているにもかかわらず、夜7時の開演に合わせて、会場に人が増え続ける。なかには「区職労」なんて幟まであって、メーデーの日比谷公園と見紛うよう。

 何ごとかと思えば、文部科学省の前事務次官・前川喜平氏(63)の講演会である――。...

―4月3日は福島県南相馬市で講演し、8日は因縁の名古屋、14日は北九州市と下関市のダブルヘッダーを経て、17日に東京・杉並区にやって来た前川氏。大人気である。講演のテーマは「憲法とわたし」。まずは主催の「前川喜平さん講演会実行委員会」からの挨拶というかアジテーションである。

 大変天候の悪い中、多数お集まりいただきまして本当にありがとうございます。(中略)みなさんご存知のように、戦後70年間続いた平和憲法、あの、たくさんの犠牲者の後に作られた憲法が、いよいよ改悪の危機に瀕しています。安倍政権のいま行っている様々な問題は、前川さんがかつて国会でお話ししたように、「総理のご意向」ということで「行政が歪められた」という発言で明らかとなっています……(後略)。

■私の名前と顔は忘れて

――この後、“レディかかあ”とかいう、見るからに“左巻き”の政治ネタ漫談を経て、ようやく前川氏の登場である。壇上に上がるや、額に左手を当てて客の入りを確認するような仕草。「ハハハ」と余裕の笑い声が、マイクを通して伝わる。……慣れている。

 いやあ、どうも、多数お集まりいただきまして、ありがとうございます。えー、皆様にお願いがございます。あと1年経ちましたら、私の顔と名前を忘れていただきたい、と。もう名前と顔が売れて困っております。私は芸能人でも政治家でもございませんので、あまり売れたくないんでございます。ただ、私、道を歩いたり電車乗ったりして、声を掛けられることが最近多くなって、ありがたいけど、“ありがたなんとか”のところもあるんです。みなさん声を掛けてくださる方は、「頑張ってね」とか「応援してるよ」とか言われても、私は何を頑張ればいいのか、何を応援されているのか、よくわからなくて、それがちょっと面はゆい気分でもあるんです(中略)。

 まあ私の場合は、顔と名前が売れてもプラスの意味で売れているのでいいんですけど、そう考えると、やっぱり佐川(宣寿)さん(編集部註:森友問題に問われた前国税庁長官)と柳瀬(唯夫)さん(同:加計問題に問われた経済産業審議官)は可哀想だなと。あんなに売れちゃって、もうひとり福田(淳一)さん(同:セクハラ財務事務次官)というのが加わりましたけど……。同じ公務員だった者として、気の毒に思っているんです。あの人たちは“悪い”んじゃないんです、“弱い”んです。……福田さんはちょっと別かもしれないなあ(笑い)。

――つかみはオッケーだ。2時間近くに及ぶ講演、気になるところを抜粋してみよう。


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デイリー新潮
2018年4月25日掲載
https://www.dailyshincho.jp/article/2018/04250640/?all=1&;page=1