https://news.yahoo.co.jp/byline/watanabeteruhito/20180411-00083847/

 森友学園問題の捜査の進展、森友に関連して決裁文書の改ざん問題、さらに安倍首相や官僚の国会での虚偽答弁問題、加計学園問題、防衛省・自衛隊の南スーダンやイラクの日報隠ぺい問題、「働き方改革関連法案」の基礎となる裁量労働制のデータ改ざんなど、安倍政権が、事実や資料の隠ぺい、改ざんや虚偽答弁の問題で揺れています。

 これらの問題で散見されるのが「無罪推定を無視するのか」という議論です。安倍政権や安倍首相がいつから刑事事件の被疑者・被告人になったのか、私には皆目分からず、法的には論外なのですが、マスメディアで弁護士がそういうことをしゃべったという話も側聞しており、何かを誤解されている方も多いようなので、無罪推定の原則について、最低限の確認をしておこうと思います。
大家の本には何と書いてあるか

 私が説明するよりも、その道の権威にご説明頂くのが良いでしょう。日本学士院会員、東京大学名誉教授の故・松尾浩也教授の本を引用します。あとで私なりの要約を示すので、名著を味わう時間のない方はこの項を読み飛ばしても結構です。

(略)

果たすべきは責任行政と説明責任

 今、国会で問題になっているのは、安倍内閣による行政の執行状況についての説明責任の問題です。

 憲法66条3項で「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」とされ、(民主的)責任行政などと言われます。ここでいう「責任」は刑事責任など法的責任ではなく、政治責任とされますが、政治責任であるゆえ、むしろ、国会を通じて国民に対して無限の責任を負っているといえるでしょう。

 また、行政には説明責任(アカウンタビリティ)の原則もあり、特に、国民に対する情報公開との関係で語られます。黒塗り文書や改ざんが乱発されている現状からすると信じがたいですが、我が国の情報公開法1条には「この法律は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする。」と明記されています。そして、この行政の説明責任は、単に情報公開との関係だけでなく、行政の執行一般に及ぶものとされます。

 これらの原則からすれば、内閣以下の行政が、国会に対して、改ざんした行政文書を提出したり、あるものをないと言ったり、虚偽の国会答弁をすることは、言語道断でしょう。

 まずは、安倍政権が、上記諸処の問題について、嘘偽りなく、事実や文書を包み隠さずにあきらかにし、責任行政、説明責任をまっとうすることが求められます。