政府は六日にも「働き方」関連法案を閣議決定し、国会に提出する方針だ。労働時間に関する厚生労働省の不適切なデータ処理問題を受け、裁量労働制の対象を拡大する部分は削除するが「残業代ゼロ制度」と批判される高度プロフェッショナル制度(高プロ)の創設は堅持し、今国会での成立を目指す。政府は労働者の権利を守るための法案と説明するが、なぜ、長時間労働を助長しかねない内容が盛り込まれたのか。その経緯を検証した。 (我那覇圭、肩書は当時)

 二〇一四年四月二十二日の首相官邸。政府の産業競争力会議の民間議員を務める長谷川閑史(やすちか)・経済同友会代表幹事は、経済財政諮問会議との合同会議で「個人と企業の成長のための新たな働き方」と題する資料を示した。労働時間でなく、成果で報酬を支払う制度創設が明記されていた。高プロの原型だ。

 競争力会議は一三年、裁量労働制の対象職種を広げる案をまとめ、政府はその方針を盛り込んだ「日本再興戦略」を閣議決定した。裁量制は実労働時間でなく、あらかじめ労使で決めた時間を働いたとみなす制度で「長時間労働につながる」との指摘がある。高プロはさらに進め、時間規制をなくす新形態。二年連続で労働規制の緩和策を打ち出した。

 長谷川氏の資料には、高プロの対象者は年収一千万円以上との例示があった。会議では、労働政策の責任者として臨時に出席した田村憲久厚労相が「医師は年収一千万円以上もらっているが、時給換算では最低賃金に近い人もいる。医師のような働き方を助長する」と懸念を表明。だが、推進派の民間議員から「企業の競争力向上に必要不可欠」などと賛成論が続出した。

 政府は二カ月後、高プロを盛り込んだ「日本再興戦略改訂」を閣議決定。安倍晋三首相は「直ちに実行に移す」と宣言した。

 首相は一二年十二月の政権復帰後、経済成長を最優先し「世界一、企業が活躍しやすい国を目指す」と公言。官邸主導で成長戦略を検討する会議を次々と立ち上げた。与党や省庁を通さず政策を決定する「ブレーン型」の手法だ。

(以降ソースにて)
2018年4月1日 07時01分 東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018040190070142.html
『首相「世界一、企業が活躍しやすい国に」 労働側不在 安倍ブレーン主導』