2018年3月10日 朝刊 中日新聞
http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2018031002000098.html

 国有地売却を巡る決裁文書の書き換え疑惑を朝日新聞が指摘してから一週間たち、森友学園問題について国会で説明してきた佐川宣寿国税庁長官が辞任した。安倍政権は佐川氏の辞任で幕引きを図ろうとしているが、問題の核心は国民の財産である土地の安値売却がなぜ起きたのかだ。それが明らかにならなければ、解決にはならない。

 佐川氏は辞任を申し出ながらも理由については「混乱を招いた」とするのみ。自身の国会答弁が正しかったのかや、文書の書き換えがあったのかなどについては、一切踏み込まず、国民の疑問には答えなかった。

 佐川氏が国会で無理な答弁を続け、最後まで説明を拒否して守ろうとしているものは一体何なのか。

 森友学園への異常な取引自体は、同氏が理財局長になるずっと前の二〇一五年から交渉され、レールが敷かれていた。安倍晋三首相夫人側からの財務省への問い合わせや、価格算定が行われたのも佐川氏が責任者になる前だ。

 安倍政権は森友学園問題を「丁寧に説明する」といいながらも、国民への説明をはぐらかし、疑惑はほとんど解明されていない。

 夫人が森友学園に関わってきた安倍首相や、当初から財務省の責任者だった麻生太郎財務相がどう関わったのか。書き換えはあったのか。佐川氏の「トカゲのしっぽ切り」で終わらせてはならず、森友学園疑惑の全容解明が不可欠だ。