2/28(水) 20:01配信
朝日新聞デジタル

 3月8日は、国連が定めた「国際女性デー」です。男女格差が大きいとされる日本を、次代を担う若い人たち、とりわけ女の子たちが性別にとらわれず生きることができる社会に――。虐待や性被害にあうなどした女の子たちを支援する仁藤夢乃さんは、「『嫌だな』と思ったら、その感覚を大事にして」と語ります。


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 居場所のない女の子を支える活動をしています。セックスでの妊娠や性病のリスクについての知識がなく、「安全日があるらしい」などと誤った情報を信じている子もいます。

 自分自身を振り返っても、きちんとした性の知識を教えてもらったことはなかったし、痴漢にあったり胸をじろじろ見られたり、ということが日常的にありました。大人の男性から性的な目で見られているという自覚があり、「性」についてポジティブに捉えられなくなりました。

 男友達から「胸、何カップ?」と聞かれたり、胸を触られたりしたこともあります。ショックだったけど、「これくらいのことで落ち込むのは自分がおかしい」「友達も同じ目に遭ってる」と思い込むようにしていました。

 痴漢に遭ったら捕まえてやろう、と思っていても、実際に遭うと怖くて固まっちゃう。サインを出しても誰も助けてくれない。いまも被害に遭いながら声を出せない子はいると思いますが、固まることで命を守ろうとするのは本能。自分を責めないでほしい。

 私は小さい頃から自分の意見を持っている子だったと思います。通信簿には「正義感が強い」と書かれた。でも、いつの間にか元気が良いと「女のくせに」と言われることに気づき、「子ども」じゃなくて「女の子」になっちゃった。

 男の子と付き合っても意見を言うと嫌がられる。つまらない話を聞いても「そうなんだ。すごーい」と、馬鹿なふりをするのが得なんだ、と思うようになりました。今の活動をするようになると、そういう男性たちは離れていきました。

 10代の頃は「20歳を過ぎたらおばさん。それまでに死にたい」と思っていた。いま考えると、若さに価値があるとメディアや大人に思わされていたんですよね。

 女の子たちと話していると、彼から「好きならエッチさせて」と言われたり、断ったら「傷ついた」と言われたりして受け入れてしまっている現実があります。「嫌だな」と思ったら、それは自分の権利が奪われそうになっているサイン。その感覚を大事にして欲しい。

 でも、家では母親が父親に気を使い、学校では教師と生徒の上下関係がある。対等な関係性というものを知らない子も多い。壁ドンが話題になるなど「男が女を暴力で支配する」ことが素敵なことや女子の憧れのように語られ、それが「男が女を守る」ことのように思い込まされている。束縛されないと不安、という女の子もいますが、好きと支配は違う。

 私は講演などでもこういう話をしていますが、講演後におじさんから写真撮影を頼まれ、「肩、組んじゃおうかな」と言われたこともあります。それでも怒れず、私の話が伝わらなかったのかな、と自分を責めてしまった。

 今でもセクハラ的な言動に接するたび、面倒くさいことになったらどうしようと考えて、「おかしいですよ」と言うのをためらってしまう自分もいます。笑ってその場をしのいで、後で自分を責めてしまうことも。それでも、気づいている人が声をあげていかないと、次の世代の女の子に同じ問題を残しちゃう。

 男性も、他の人のセクハラに気づいても「やめろ」と言ってくれる人は少ないですよね。でも、想像してみてほしいんです。電車に乗ったら、痴漢に遭わなさそうな位置はどこかといつも考えること。夜道を歩く時には自然と携帯を握りしめていること。

 当事者じゃない人が現状を知り、声をあげてほしい。男性の性被害もありますが、女性以上に言えていない。みんな、もっと怒っていいし、怒った時に「そうだよね」と言ってくれる人がいれば支えになります。(聞き手・山本奈朱香)


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 にとう・ゆめの 1989年生まれ。一般社団法人「Colabo」代表。虐待や性暴力被害にあうなどした女子中高生支援を行っている。著書に『難民高校生』(ちくま文庫)、『女子高生の裏社会』(光文社新書)がある。一昨年から、つながる少女たちと企画した「私たちは『買われた』展」を随時開催中。

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