(2月17日)信毎WEB
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 学校法人、森友学園への国有地売却問題で事前の価格交渉を否定してきた政府の答弁は正しいのか。

 疑問を募らせる文書や音声データが次から次へと出ている。佐川宣寿国税庁長官に改めて国会での説明を求める必要がある。

 問題が持ち上がった当時、財務省の理財局長だった佐川氏は国会で「価格を提示したことも、いくらで買いたいとの希望があったこともない」としていた。交渉や面会の記録は「廃棄した」とし、約8億円値引きの売却が適正だったとの説明を繰り返した。

 今年に入って財務省は、交渉を巡る法的問題を検討した相談記録を開示した。情報公開請求に対応する中で見つかったという。「売買金額は、事前調整に努める」など、学園側とのやりとりの経緯が記されている。

 音声データも昨年来、確認されている。国側が「ゼロに近い金額まで、できるだけ努力する」と話すものも含まれる。共産党が先ごろ公表した音声データには値引きの根拠となったごみについて国側が主導して地下深くにあると擦り合わせるような発言もある。

 佐川氏の答弁の信ぴょう性が揺らぐ中、政府、与党は擁護を続ける。麻生太郎財務相が森友問題については「現在の理財局長が責任を持って答弁する」と述べるなど野党が求める佐川氏の国会招致を拒否する考えを示している。

 財務省は、新たな文書は内部の検討資料であり「学園との交渉記録ではない」とし、つじつまを合わせようとしている。音声データを巡っては「金額については、やりとりがあった」と認める一方で価格交渉を否定する。どちらも苦しい説明だ。

 国会答弁に当たり、佐川氏は学園側と国側の担当者のやりとりをどのように確認したのか。交渉の関連文書を見つける努力はどこまでしたのか。本人から詳しく事情を聴かなくてはならない。

 佐川氏は昨年7月に長官に就任して以降、記者会見も開いていない。国民の財産である国有地の売却が不透明な形で進み、公平さや公正さに疑問符がついた。徴税部門のトップとしても放置できる問題ではないはずだ。

 自民党は、国税庁長官の国会招致は慣例と異なるとして野党の要求を拒んできた。長官を含む事務次官級は役所全般を監督するため答弁に立たないというものだ。昨年3月に当時の長官が参院予算委員会で参考人として答弁しており説得力はない。