2018.2.16 13:00ごろ(JST) BBC
http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-43071298

第2ピリオドの途中まで来たところで、ランディ・グリフィン選手が右ウィングから攻め、日本のゴールキーパー、小西あかね選手の脚の間にパックをすり抜けさせた。

パックがネットに滑り込むと、観客は歓喜に沸いた。観客席では、赤に身をまとった北朝鮮のチアリーダーたちが喜びを爆発させた。

五輪史上初めて、韓国と北朝鮮の合同チーム「コリア」の女子アイスホッケーチームが得点を入れたのだが、ただの得点ではない。日本戦で1点取ったのだ。

コリア・チームが勝ちそうなのだと勘違いしても、許されただろう。実のところ、試合は1対4で負けてしまった。しかし得点したのだ。そして勝利への熱意のみが試合の勝敗を決めるのだとしたら、コリア女子チームは、日本チームを圧倒的な差で打ち負かしていただろう。

「北朝鮮選手の思いは私たちと同じだ」。韓国代表のチョイ・ジヨン選手は試合に先立ち、こう述べていた。「日本相手のこの試合には、何が何でも勝たなきゃいけないと、お互いに声を掛け合った」。

北朝鮮と韓国は、正式には今も戦争中だ。非武装地帯を挟み、今も何千もの大砲やミサイルが互いに向けられている。しかし、日本を打ち負かすという共通の思いほど、北と南を1つに結びつけるものはないだろう。

韓国の英字紙コリア・タイムズに対し高校生のミン・スンウォンさんは、今の状態を次のように要約した。「私は当初、北朝鮮チームが韓国チームに加わるのに反対だった。でも日本戦は私たちにとって、国として大きな意味を持つ。歴史的な緊張から、日本戦に勝つために北と南の選手がもっと団結して協力できればいいなと思う」。

ミンさんが言っている「緊張」とは、多くの北朝鮮人および韓国人が日本に抱く、怒りというより憎しみでさえある感情を指す。日本が20世紀前半に朝鮮半島でした残忍な占領が原因だ。

この占領は、第二次世界大戦中に何万人という朝鮮半島の女性が性奴隷として働いた出来事も含まれる。

日本海、あるいは韓国語で「東海」と呼ばれる海を挟んで見ている日本の安倍晋三首相にしてみたら、平昌冬季五輪で見られたこの行状は、試合観戦を居心地の良くないものにする。

韓国外交部でかつて副長官を務めたキム・スンハン氏は数日前に五輪について話した際、次のように断言した。「北朝鮮は、明らかに金メダルを勝ち取っているようだ」。

選手が、という意味ではない。ミサイル発射から平昌五輪の全面的な受け入れまでの、北朝鮮の類まれな変わり身を言っているのだ。中には北朝鮮の首都をもじって、「平壌五輪」と呼び始める人までいるほどだ。

(以降ソースにて)