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【時代の正体取材班=石橋 学】ヘイトスピーチ対策に取り組む有田芳生参院議員をインターネット上で脅迫したとして、東京簡裁が埼玉県の右翼活動家、被告の男(44)に罰金10万円の略式命令を出したことが分かった。命令は11日付。東京区検が9日、脅迫罪で略式起訴していた。

 告訴状などによると、被告は昨年3月、自身のブログに「有田芳生に天誅(てんちゅう)を加えむ」などと書き込み、1960年に日本社会党の浅沼稲次郎委員長が右翼の暴徒に刺殺された事件の写真を掲載して脅した、とされる。有田氏が翌月に刑事告訴し、警視庁が10月に書類送検していた。

 被告は「渡邊臥龍(がりょう)」を名乗り、街宣活動でナチスの旗を掲げるなど人種差別の思想を流布させてきた。極右政治団体「日本第一党」幹部が川崎市で計画した講演会を「ヘイトスピーチが行われる可能性が高い」と国会で問題視した有田氏に「虚偽の質問を行った」と言いがかりをつけ、ツイッターでも「国賊有田芳生の自宅に突入」などと危害の実行をほのめかす投稿を繰り返していた。

■抑止には「量刑軽い」
 有田芳生参院議員の話  有罪という事実は重いが、被害当事者からすれば量刑が軽すぎる。ネットによる脅迫や差別扇動の抑止につながるか心もとない。

 人種差別主義者はマイノリティーの存在そものを否定する。私が差別を扇動するヘイトスピーチ対策に取り組んでいるからこそ標的にしている。つまり私への脅迫は差別から守られるべきマイノリティー全体への脅迫を意味している。ネットによって拡散、扇動された差別は、マイノリティー危害を加えるヘイトクライム(憎悪犯罪)につながる。司法関係者にはそうした危険性への認識が不足しているのではないか。

 深刻な現状に即した判断が求められるとともに、ヘイトスピーチ解消法に禁止規定を盛り込む改正や、差別そのものを禁止する人種差別撤廃基本法の必要性が改めて浮き彫りになった。

 匿名のアカウントによる私への殺害予告は続いており、差別反対の声を上げたマイノリティーの被害当事者に対する、より深刻な誹謗中傷や脅迫も野放しのままだ。私はヘイトスピーチの根絶に取り組む国会議員として告訴に踏み切ったが、一般人にとって告訴はハードルが高い。ツイッター社などのインターネット企業は、差別書き込みを削除するなどの対応が急務だ。