週刊新潮 2017年12月21日号掲載 デイリー新潮
https://www.dailyshincho.jp/article/2017/12220554/?all=1

東京地検特捜部に詐欺容疑で逮捕された「PEZY Computing(ペジーコンピューティング)」創業社長の齊藤元章容疑者(49)。司法記者によれば、

「2010年に設立されたペジーは、その年から国立研究開発法人『新エネルギー・産業技術総合開発機構』(NEDO)から助成金を得ていました。その中で助成金を不正に流用したことを認めたのが14年分。関連会社などへの事業外注費を水増しした実績報告書を提出し、助成金およそ4億3100万円をダマし取った疑いがもたれているのです」

 齊藤社長は1992年に新潟大医学部を卒(お)え、94年に東大大学院へ入学すると同時に日本で起業。97年、今度は米シリコンバレーに打って出て医療機器ベンチャーを起こした。

「ナスダック市場での株式公開を目指していたところ、『3・11』が発生し、日本でできることは何かを求めて帰国したということです」

 と、関係者。しばらくして唱え始めたのが、シンギュラリティなる言葉だ。

「『技術的特異点』と訳されていますが、つまり、人工知能が進化してそれが人類を超えるポイントを指す。で、彼が言っているのは、ざっとこんな感じになる。現状の1000倍ほどの性能を持つスパコンが出てくることでエネルギー問題・食料問題が解決する。それで衣食住はフリー、お金も不要となり、犯罪や事件、事故のない社会が実現する。更に不老まで実現し、人体は有機物から無機物へ置き換えられていく……」(同)

稼働率が悪いんです」
 時代を変える寵児は鼻白むような態度を取ったり、荒唐無稽な物言いをしたりするものだけど、彼の実力はどう評価されてきたのか。

 スパコン事情に明るい技術者はこう手厳しい。

「昔、レシプロ・エンジンというものがありました。飛行機ではこれが主流でしたが、今はジェット・エンジンですね。その転換は産業革命と言っていいほどの違いがあります。齊藤はそれがスパコンでできると思っているのですが、最先端は量子コンピューターです。これはまさしくジェット。レシプロを搭載したゼロ戦は遅いからエンジンを4個つけよう……。彼はそういうことを言っているわけですが、量子コンピューターはジェットですから高度もスピードも全然違う。レシプロをいくらつけようが、ジェットには到達しない。にもかかわらず、経産省がスパコンにお金をつけているとすれば、これはよほどのバカか利権がらみなんです」

 最大の問題点として、

「実用化できないものを作って世界一と言ってるところ。それって意味あるのでしょうか。ミサイルの弾道を計算するとか言ったって、実際には防衛省はそんなもの使っていない。既にあるもので十分だから。更に稼働率が悪いんです、齊藤のスパコンは。しょっちゅうシステムエラーを起こす。スパコンが熱くなりすぎて暴走する。省エネ世界一である前に稼働率50%も夢のまた夢だと思います」

 矛先は資金の出し手にも向かって、

「明らかにおかしいのはNEDOが金を出したこと。それくらいあそこは審査が厳しい。この程度で通ったというのは、不思議でしょうがないね」