https://ryukyushimpo.jp/style/article/entry-632506.html

今月7日、沖縄県宜野湾市内の保育園の屋根に、在沖米軍のヘリコプターで使われるプラスチックのパーツが落下する事故が起きました。落下したパーツは長さ9.5センチ、重さ213グラムのサイズで、米軍の大型輸送機CH53のプロペラのセンサー機器のカバーでした。幸いけが人はいませんでしたが、保育園の屋根には落下の衝撃と見られるヘコミが残っています。

この事故から1週間も経たない13日、宜野湾市内の小学校の運動場に、在沖米軍のヘリコプターの窓が落下する事故が発生しました。落下した窓枠は90センチ四方、重さ7.7キロで、前述した事故と同じ大型輸送機CH53のパーツでした。この落下の衝撃で飛んだ小石が腕に当たり、小学4年生の児童が軽傷を負っています。

立て続けに起きた普天間基地所属のヘリコプターによる落下事故。米軍の対応も含め、多くの県民が怒りや不安、悲しみを覚えたと思います。

この連続事故を踏まえ、ネットでは沖縄に寄り添う声も多く上がりましたが、併せて事実に基づかない、心ない書き込みなども多く見受けられました。
まとめサイトと識者によって作られる「自作自演だ!」の声

最初の保育園への落下事故が発生した後、米軍側はヘリコプターの部品だと認めた上で「飛行中に落下したものではない」と回答し、落下事故であることは否定しています。

米軍が否定した直後からネットでは「保育園側が基地の危険性を訴えるための自作自演では?」と書き込まれるようになりました。

こうした「自作自演論」を煽っているのは、ネットのまとめサイトです。
ツイッターなどから自作自演の書き込み、意見だけを抜粋してまとめます。

正直、まとめサイト「だけ」を見ると、自作自演論が大量にならび、「みんな言っているから確かにそうかも...」と一瞬、錯覚してしまいます。
しかしながらそうした書き込みには保育園側の自作自演を裏付ける証拠は一切なく、憶測や関係者の政治思想を根拠とした思い込みで構成されています。

自作自演論がネットから湧いて、実際に保育園に苦情の電話なども入っています。
イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

こうした眉唾なまとめサイトの情報に「お墨付き」を与えるのは、多くのファンを持つ、論客・オピニオンリーダーです。
メディアへの出演、著書などを多数出版し、ツイッターでのフォロワー(観覧者)も多い彼・彼女らが、「マスコミが報道しない真実」などと一言添えて拡散します。(事実に基づかないから報じないのは当たり前だろ!と思わずツッコミたくなります)

思い込みの書き込みも、大量に集まることで事実のように見え、さらには論客が後押しすることで説得力が増したように感じます。
こうした現象を「エコーチャンバー」「サイバーカスケード」現象と呼びます。
インターネット、特にソーシャルネットワーキングサービス(SNS)では似たような意見の人と繋がることが多く、意見が偏りやすいのです。
情報や意見を受け取る場合は、事実が明らかになっていることを基本に考え、推測が入る場合は割り引いて考え、断言しないこと。そして多方面からさまざまな意見を見聞きすることがネット時代では大事だと感じます。

推理を行わない

(略)

ネットで変に盛り上がる沖縄の基地問題

沖縄の基地問題をめぐっては、「沖縄の基地負担軽減を」「国防のために早く移設しろ」など、ネットで意見が別れることが多く、コメント欄などでは常にバトルが繰り広げられています。

基地問題は沖縄にとっても、日本全体にとっても大きな問題なのでさまざまな意見が出て、議論が繰り広げられることはとても健全なことです。

しかしながら今回のように「自作自演では?」「いや、自作自演と決まったわけじゃない」というやり取りは、本質的な議論ではなく、基地問題を考えるスタート地点にすら立っていません。

米軍基地の危険性や移設の是非、抑止力や「沖縄でないといけない理由」など、争点はとても多い中、デマや推測、根拠のない情報を基にしたやり取りは不毛であり、時間の無駄、本来進むべき話も進まなくなるので、誰のためにもなりません。

改めてですが、デマが蔓延しやすい「エコーチャンバー」「サイバーカスケード」現象に気をつけ、犯人を決めつけないようにネットを使うしかありません。