https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171214-00000045-sasahi-pol

 総選挙後に突然始まった増税ラッシュに、国民の怒りがマグマとなって噴火寸前だ。

 自民、公明両党は14日、2018年度の税制改正大綱を決定した。年収850万円を超える人への所得控除を縮小、たばこ税を21年までに1本あたり3円増税するなど、増税メニューが並んだことが特徴だ。一方、子育て・介護世帯は増税の対象外としたことで「高所得者向けの増税」をアピールしている。

 だが、これはマヤカシにすぎない。19年1月には27年ぶりとなる新たな税金「国際観光旅客税」を新設。日本から海外に渡航する人に一人あたり1000円を航空代金などに上乗せする。同年10月には消費税率がいよいよ10%に引き上げられる予定だ。さらに24年度からは「森林環境税」も作り、年間一人あたり1000円を徴収する。増税の荒波が、国民の生活を次々に襲う。

 もちろん、少子高齢化などの影響で政府の財政事情は厳しい。だが、その半面で今、「税金が正しく効率的に使われているのか」という疑念がかつてないほど高まっている。

 そのきっかけとなったのが「森友疑惑」の国会追及で安倍晋三首相の防波堤となって政権を守り抜き、今年7月に国税庁長官に栄転した佐川宣寿氏だ。

 佐川氏は前職の財務省理財局長時代に、森友学園への国有地払い下げで8億円の値引きをした根拠について「記憶にない」「記録は破棄した」などの答弁を国会で連発。税の使い道について国会で虚偽答弁をしたと疑われる人物が、”論功行賞”なのか、国税庁長官に抜擢されたのだから、国民の怒りが爆発するのも当然だ。

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 こうした政府の高圧的な態度に、これから現場で増税をお願いする立場となる税務署職員が批判の矢面に立たされている。

 税務署職員の労働組合である全国税労働組合は、10月に佐川長官と面会して組合員の声を直接伝えた。納税者に領収書の不足を指摘すると「おたくのトップは認められるのに」と言われたり、税務関係の資料について「来年からは提出しない。信用できない」という批判があったりしたからだという。

 前出の醍醐氏は言う。

「公務員は『国民全体の奉仕者』であり、一部の人のために働いてはいけません。ところが、佐川氏は上司と自己保身のためだけに仕事をしていたと思わざるをえない。また、佐川氏は国税庁長官に就任以来、記者会見も開いておらず、疑惑を晴らして国民との信頼関係を築くつもりもない。国民からの信頼関係がなくては税務署の仕事は成り立ちません」

 森友疑惑については、会計検査院による調査報告でも、8億円の値引きについて「根拠が不十分」と指摘されている。また、12月8〜10日に実施されたNHKの世論調査では、国民の66%が「適切ではなかった」と答えている。

 ところが、安倍首相は批判はどこ吹く風で、早々に幕引きをしたいようだ。

 そのことを象徴的に示す例がある。公文書管理法第8条の規定では、内閣総理大臣は各大臣に記録文書の保存を命じることができる。そこで、6月4日の決算行政監視委員会で民進党の篠原豪衆院議員(当時、現・立憲民主党)が安倍首相に対し、森友疑惑に関する資料の保存を財務省に指示するよう求めたところ、「措置をとる必要性はない」と拒否。この頃は、財務省の職員用パソコンの更新時期だったが、疑惑解明につながる資料が廃棄された可能性もある。

 会計検査院に売買交渉の過程について資料不足を指摘された安倍首相は、11月28日の国会答弁で「財務省が法令にのっとって適切な価格で売買していることを信頼していると申し上げた。私が調べて、私が『適切』と申し上げたことはない」と語った。証拠となる記録の保存を官僚に命じなかったのは自分であるにもかかわらず、部下である官僚たちに責任をなすりつけたのだ。

 あまりにもひどい安倍首相の対応に、政権を追及する側からも官僚に同情する声も漏れている。ある野党議員は言う。

「おかしな答弁を強要される官僚たちがかわいそうでしょうがない。もう、目が死んでいる」

(AERA dot.編集部・西岡千史)