自民党内に「衆院解散権の制約」を憲法改正の論議に加える案が浮上している。近年、「首相の解散権が乱用されている」との批判が高まっていることを受けたものだ。解散権の制約については立憲民主党が求めてきた経緯があり、憲法改正に消極的な野党を改憲論議に呼び込む思惑もあるようだ。【小田中大、木下訓明】

 大島理森衆院議長は6日、伊吹文明氏ら元衆院議長らと懇談する場を設けた。関係者によると、この場で出席者から「首相の意向で、国権の最高機関の解散を決められるのはおかしい」との意見が出た。同席者からも理解を示す発言があったという。この会合での発言については、自民党改憲推進本部に報告された。同本部の幹部の一人は「実際に改憲項目として議論するかはこれからの政治状況次第だ」と語っている。

 憲法は、衆院の解散について、内閣不信任案が可決された場合に衆院を解散するか内閣が総辞職するかを求めた69条、衆院解散を含めた天皇の国事行為を定めた7条を根拠にする2パターンを規定。歴代首相らは、7条解散について、天皇に助言する内閣に独自の解散権があると解釈してきた。しかし、憲法専門家の間には「7条は解散の手続きを定めただけだ」として、69条解散しか憲法は認めていないとの主張が残る。

 一方、自民党が検討を重ねてきた自衛隊を憲法に明記する案など改憲4項目については他党に賛同する動きが広がっていない。公明党は改憲への慎重姿勢を強め「改憲には野党第1党の理解を得るべきだ」と主張。こうした事情も踏まえ、立憲が議論に参加しやすい解散権制約について議論を容認する発言が出ている模様だ。実際に自民党が党内議論の俎上(そじょう)に載せるかは、来年の通常国会での公明や立憲などの動向を踏まえての判断になりそうだ。

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